Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

静かなクリスマス休暇

今回、「旅先で迎えるクリスマス」というものを初めて経験しました。今までは、義両親のいるルクセンブルグ、マドリッドの我が家、マルベヤの家、ということはよくありましたが、ホテル等に滞在することはありませんでした。

オビドスから車で30分程の場所にあるナザレの大聖堂。

旅行をしようと決めた一番の理由は、義父がいなくなったことです。2016年、闘病中の義父とクリスマスを迎えたのは我が家だった為、どうしても同じ場所でクリスマスの「お祝い」をする気になれなかった、というのが大きな理由です。とは言え、子供達はクリスマスをとても楽しみにしていたので、「大人の理由」でお祝いを簡素化しすぎてもいけない・・・と、悩みに悩んだ末、ほぼ私の独断で、旅行に行くことを決定しました。

旅行先を選ぶ際の条件は、以下の通り。

①まだ行ったことのない場所。
②クリスマスらしさを楽しめる場所。
③アクセスが比較的用意。
④子供と一緒でも過ごしやすい場所。

最初は、ブダペスト、プラハ、ストラスブルグ、リスボン等も候補に上がりましたが、クリスマス直前のフライトは乗り継ぎが必要なものばかりだったこと、土地勘の全くない寒い場所で三人の子供たちを連れて移動するのはしんどいと思ったこと等が理由で、かなりの都市は却下されました。

最終的に、あるママ友達が「友人がすごく良かったと言っていたから、ぜひ行ってみたいと思っているの。」という、ポルトガルのオビドス(Obidos)という街を選びました。人口1万人超のこの街は、ローマ時代の城壁、中世の建築物や石畳の通り等をそのまま残しており、フェニキア人の貿易等でも知られている非常に歴史ある街です。クリスマスにはマーケットも出ると聞き、子供達にとってもクリスマスらしい雰囲気を楽しめるのでは、と思ったのもこの場所を選んだ理由でした。

クリスマスシーズン真っ只中のオビドスにて。確かに、クリスマスらしい雰囲気です。

滞在先は、Air B&Bで一軒家を選びました。私たち家族だけではなく、義母と義弟も滞在することになった為、義母の厳しい審査基準をクリアするだけの「きれいでしっかり手入れされた家」で、皆で滞在しても快適な広さの家で、長男と長女が仲良く寝られる部屋があり、ベビーベッドを用意してもらえて、さらに街の中心地にアクセスしやすい等の条件で探しました。(かなりワガママです。)

オビドスの城壁。

城壁内部はこのように歩けるようになっていますが、柵がなくて危険な場所もありました。5〜6メートルの高さはあると思います。

大人数での移動となったため、大型車を借りてマドリッドからポルトガルまで移動することに決定。荷物も全て持って行けるよう、9人用の車を借りました。6時間の旅でしたが、車の中で皆でお弁当を食べ、子供達はお昼寝をし、何とか無事に到着することができました。

オビドス到着後、子供達は「オビドスの我が家」に大興奮。勝手がよくわからなくて困った部分も多少ありましたが、暖炉やゲームのある家をとても気に入ってくれました。

私たちの寝室。ベビーベッドも置いてもらいました。

他の寝室もなかなか良かったです。

子供達は、この帆布を降ろしたくてうずうずしていました。

滞在中には、そこから比較的近い場所をいくつか訪ねました。

●ファティマ(Fátima)

ファティマの大聖堂。広大な敷地でした。

100年前に3人の羊飼いの子供たちの前に聖母が出現し、その後聖地として多くの巡礼者を迎えている土地です。聖母マリアの予言の話、長い間生きていたシスター・ルシアが教皇ヨハネ・パウロ二世と会った話等は非常に有名です。

大聖堂の中には、聖母を見た3人の羊飼いのお墓があります。

●バターリャ(Batalha)

バターリャの修道院。

ゴシック建築にルネサンス様式が加わった非常に有名な修道院があります。これは、ポルトガルがスペインのレオン王国に戦で勝利したことを記念して着工された修道院で、バターリャとは「戦い」を意味します。ちなみに、修道院の正式な名前は「勝利の聖母修道院(Mosteiro de Santa Maria da Vitória)」。勝利を記念したということがよく分かりますね。

修道院の一部である「未完の礼拝堂」にある国王ジョアン1世と王妃の棺。石碑に手を繋いだ像があるものを初めて目にし、非常に印象に残りました。深い絆があったのでしょう。

●ナザレ(Nazare)

ナザレの海岸。海、砂浜と家々のコントラストが素敵でした。

ポルトガルの美しい海岸線はよく知られていますが、ナザレの海岸も非常に美しく、登山電車によって、上から見る海と海岸近くの散歩を両方楽しめるのも良かったです。また、そこにある教会の「ナザレの聖母」を間近で見ることのできるツアーも非常に良く、教会内部のタイル貼りの部屋の美しさは圧巻でした。

ポルトガルでは一時期、白地に青のみのタイルを作っていましたが、この手描きの絵の美しさにはいつも感動します。

●リスボン

言わずと知れた、ポルトガルの首都です。ちょっとボヘミアな感じの雰囲気が私は大好きです。今回はあまり観光はできませんでしたが、久々に会った友人とたくさん話をすることができました。

たくさんのドライフルーツや温野菜を出してもらい、その自然の美味しさに大満足でした。ポルトガルではよくおつまみとして色々なものを出しますが、やはり一番有名なのはアーモンドだそうです。

●オビドスの潟(海から一部続いているような湖で、潮の湖と言えば良いでしょうか)

寒さも何のその、広い場所を思いっきり歩けて次女はご機嫌です。

静かな観光地としてよく知られていて、自然とも触れ合える素敵な場所でした。

普通の家に滞在しつつ、無理のない形で観光も楽しめたので、子供連れにはありがたかったです。

クリスマスイブは、旅行中であることを口実に、いつもの年ほど入念な準備はしませんでした。それでも、ちょっとしたメニューを考え、新鮮な鮭を見つけたので、鮭の料理を一品作りました。ケーキを作ろうにもケーキ型もなかったので、今年は子供達と一緒にジンジャーブレッドを作り、ナイフでクリスマスツリー形に成形したものをいただきました。

ディナーの様子。飾りらしい飾りは、テーブルの真ん中にあるツリーのみです。

ディナーの時は、どうしても義父のことを考えずにはいられませんでした。乾杯をしても、義母が無理をして笑顔を作っているのがわかり、何だか切なくなり、食事をしながらも昨年の義父のことが思い出され、思わず食べながら涙が出てきました。義母がさっと席を立ち、私の肩に手を置いて、「せっかく子供達もいるから、楽しく過ごしましょうよ。」と言ってくれました。気持ちを鎮め、皆とのひと時に感謝し、子供達に気持ちを向け、その日のディナーを無事に終えることができました。

皆いろいろな思いを抱えてのディナーでした。

旅行中ということもあり、サンタクロースは小さいプレゼントを子供達一人一人に届けてくれました。長女には、スペインでも人気のシルヴァニアファミリーの赤ちゃんウサギです。息子には、以前息子が大好きで使い倒してボロボロになったトミカのバスの新品が届き、息子も大満足です。次女には、赤ちゃん向けのおもちゃのカメラ。次女はあまり遊ばずにその辺に投げてしまいましたが、さすが赤ちゃん向け、投げても全く壊れない頑丈な作りです。今も次女の荒い使い方に耐えています。

帰りには、スペインのカセレスという場所にも滞在しました。以前にも一度夫と二人で行ったことがありましたが、子供達と一緒にまた訪れるのも、以前とは違った良さがありました。2年前に訪れた時は、次女がまだお腹の中にいて、義両親が我が家に残って長男と長女の世話をしてくれていたことを思い出しました。たった2年の間に、本当に色々なことがありました。

カセレスの建物。この街の中心地はユネスコの世界遺産に登録されています。

長旅だったとは言え、車で国境を越えたり小さな村を横切ったりすると、普通の観光では見えない部分が見え、なかなか新鮮でした。そして、9日間家を空けてから帰宅すると、また我が家の良さもしみじみと感じました。

小さい子供達と一緒だと色々な制約もありますが、その制約の中でもマイペースで楽しめる旅行ができ、家族で一緒の時を過ごせたことに感謝です。また一つ、家族との思い出が増え、義父不在の寂しさが埋まっていくような気がします。

 

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