Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

息子の洗礼式

洗礼式の最中に椅子に上ったり降りたりしている息子。

洗礼式の最中に椅子に上ったり降りたりしている息子。

洗礼については娘の洗礼の機会に書いたので、特に詳細は書きませんが、スペインではまだ子供たちが小さいうちに洗礼式を行うのが一般的です。実際、夫は夫の祖父が「どうしても洗礼を授けたい」と言った為に3歳の時に洗礼を受けましたが、当時はそれが全く一般的でなく、当初夫に洗礼を授けるのを拒否した司祭もいたそうです。寛容の精神を教えるはずのキリスト教も、人の手にかかると排他的にもなり得るんだな…と、ちょっと残念な気持ちさえしてしまいます。今はそういうことはなく、今回息子に洗礼を授けた司祭も、私たちの決定を非常に喜んでくれましたが。

娘の洗礼は、母と義母のゆかりのある「奇跡の聖母」の教会にて執り行いました。その為には、自分の住む地区(教区)の教会に行って正式な許可証を得る必要があり、それなりに準備に時間を取られた記憶があります。今回は、自分の住む地区の教会にて洗礼式を行うことに決め、忙しい義父の予定等も組み入れて、12月位から準備を開始しました。

教会によって様々ですが、今回の息子の洗礼の前には「洗礼前講座」という1時間程度の講座に3回参加しました。週末のお昼に子供達を誰かに預けて講座に参加するというのは、簡単そうでいてなかなか大変でした。共働きだと、週末の買い出しや人会う予定が週末に集中する為、講座に参加する前は何かと準備が必要だったりしますし、子供達を預ける相手も仕事を持っているという状況で、お願いするのがちょっと申し訳なかったり…。とは言え、なんとか講座も無事に終了です。

式当日の娘とおじいちゃま。

式当日の娘とおじいちゃま。

講座で言われて印象に残っているのは、「教会で結婚している人は、子供たちをキリスト教的な価値観で教育する義務があります。市役所での結婚のみの人にはそういった義務は発生しません。」という部分。日本でよくキリスト教式の結婚式を挙げる人がいますが、皆がこの考えをはたして理解しているのでしょうか。そう思うと、以前友人の結婚式で聞いた「結婚式を執り行うことは教会にとっての喜びです。」という意味ももう少しよくわかる気がします。

ドキリとしたのは、「教会で結婚をしていない親であっても、子供に洗礼を授けるということは、親が子供をキリスト教的な価値観で教育するということの決意の表明です。」という部分です。そう言われると、「皆がやるから」とか「 楽しく皆で過ごす良い機会だから」と言った生半可な気持ちでは式を挙げられません。改めて、洗礼というものについて考える良い機会になりました。

洗礼1週間前には、司祭と一緒に話す機会もありました。その司祭が、「子供にとっての精神的な部分での本当の誕生は洗礼の日なのです。神の深い愛とつながり、生涯に渡って神と一緒に歩む意義のある日なのです。」と言った説明を受けました。また、 以前の教皇ヨハネ・パウロ2世が自分が洗礼を受けた教会を訪ね、「私はここで生まれました。洗礼を受けた日が私の誕生の日です。枢機卿や教皇になった日は、洗礼を受けた日に比べればそこまで大切ではないのです。」と言ったという話も聞きました。宗教については人それぞれ考え方の違いがあると思いますが、個人的には、それだけ大切な日ということを改めて感じ、新たな気持ちで洗礼の日を迎えることができました。

洗礼の前には色々な準備がありますが、具体的な準備についていくつか書きます。

1.日程調整

私たちは身近な親戚と友人しか招きませんでしたが、大きな行事だけに、通常は日程調整がとても大変です。数ヶ月前から準備するか、来られない人がいても仕方ないとして処理しなければいけません。

私の義両親や親友の一人はスペインの外に住んでいるので、飛行機のチケット等の手配もありました。早目の準備が大事です。

2.代父・代母の選定

洗礼を受ける子供の精神的な後見人として、代父・代母を選びます。これがいわゆるGodfather (スペイン語では”Padrino”)、Godmother (スペイン語では“Madrina”)のことです。自分の子供たちの後見人になるということで、伝統的には裕福な人や有名人を代父・代母に選ぶということが行われました。というわけで、選ばれるのは名誉なことである反面、経済的な支援やその他必要なサポートを与える役になるということで、誰の子供の代父・代母になっても良いというものでもありません。それなりの責任も伴う訳ですね。

息子の代父には義父、代母には夫の叔母になってもらいました。夫と夫の叔母は直接血のつながりはない訳ですが、私たちの子供を本当に可愛がってくれる人なので、こちらも喜んでもらえれば…と思ってお願いしました。彼女は、姉の娘の代母になったのが最後だったそうで(35年以上前)、今回の代母の話は非常に喜んでくれました。

3.レストランの選定と予約

参加者が決まった段階でレストランの予約です。通常は、洗礼を受ける子供の両親が全て支払いますが、伝統的には代父の役目です。そう思うと、裕福な人が代父に選ばれるのは納得ですね。

今回のレストランの選定条件としては、①ランチの時間帯で雰囲気が良い場所、②子供と一緒でも大丈夫、③料理が独創的で美味しい、④家から比較的近い、等です。色々考えた結果、私たちがいつも行く市場の裏にあるレストランに決定です。見かけはレトロな感じですが、いつも市場の新鮮な食材を使ったアジア風の独創的な料理が出され、こちらが「ストップ」と言うまでは出し続ける…という、なかなか面白い お店です。料理人はスペインに20年以上住んでいるという香港の人で、一度友人と行った時に 料理の盛り付けや味が気に入ったことが決め手となりました。

4.子供たちの洋服選び

一般的な洗礼の服というと、赤ちゃんを対象とした白いドレスになりますが、2歳の息子に白いドレスを着せる気にはなれず、しっかりしているけれど動きやすい服を探しました。さらに、こちらではフォーマルな場所では子供達を同系色の洋服でまとめることが多く、2月から息子の服と娘の服を探し始めました。人によっては、洗礼式の為に4−5万円かけた洋服一式を揃えたりもしますが、私たちは自分たちの身の丈に合ったものをと思い、セールを覗いたりして物色です。

最終的には、セールで素敵な 白いシャツとグレーのズボンを見つけることができたので、それをベースに息子の丈に合うセーターやタイツや靴を探しました。子供達に本当に合うデザインがあるかどうかも考慮し、メインカラーは青に決まりました。幸運にも、友人が娘のワンピースを作ってくれ、子供達を同系色で統一するという課題もクリアできました。

義母と一緒に歩く息子。シャツはÑaco、ズボンはNeck&Neckというスペインのメーカーのものです。

義母と一緒に歩く息子。シャツはÑaco、ズボンはNeck&Neckというスペインのメーカーのものです。

今回の服探しでは本当に何日もかけて 色々なお店を回りましたが、ようやく納得の行くものが見つかって本当に良かったです。(見つかるまではなんとなく落ち着かなかったです。)そんなこんなで準備ができましたが、自分と夫の服は洗礼式2週間前まで考えていませんでした。大人の服はどうしても後回しです(笑)

5.インテリア
洗礼と言うと、(当たり前かも知れませんが)非常に宗教的な物か、赤ん坊を想定した夢のあるような装飾がよく見られます。個人的には、そこまで宗教の色を強く出したインテリアにはしたくなかったこと、甘すぎずさり気ない飾りにしたかったこと、インテリア用品はその後も使えるものにしておきたかったこと等の理由で、ネイビーのテイストを足すような形にしました。アイディアはPinterestというHPとZARA HOMEが参考になりました。

Pinterestで検索すると、こんな洗礼式のテーブルセッティングまで出てきます。オリジナルのサイトはwww.miraquechulo.com。

Pinterestで検索すると、こんな洗礼式のテーブルセッティングまで出てきます。オリジナルのサイトはwww.miraquechulo.com。

子供達が寝静まってから写真立てを取り出したりポスターを作ったりしていましたが、何度もああでもないこうでもないと考えたせいか、前日の準備は思った以上に早くできました。また、招待した友人カップルが前日に我が家に素敵な白い花のブーケを届けてくれたので、直前に花を買いに行く必要がなくなったのもありがたかったです。

テーブルを一つリビングに置きました。右端にあるのは参加者へのプレゼントです。

テーブルを一つリビングに置きました。右端にあるのは参加者へのプレゼントです。

6.プレゼント
洗礼式の場合、よく招待客にプレゼントするのはアーモンドや松の実の砂糖がけ(ドラジェと呼ばれます)やロザリオ、クッキーの詰め合わせ等だと思います。娘の洗礼式の時にはドラジェとマルセイユ石鹸をプレゼントしましたが、今回また同じ物にするのもどうかなぁ…と思い、色々なお菓子を見て回りました。

そんな時に偶然バルセロナの友人からもらったPapabubbleというメーカーのキャンディーを思い出し、その包装やデザイン、味に惹かれ、これをプレゼントにすることに決定。このメーカー、バルセロナが本店ですが、都内にもいくつかお店を出しているそうです。そして、マドリッドには進出していないというあたりが、やはりカタルーニャのお店だなぁと思いました(笑)

Papabubbleのキャンディー。色々な種類があります。

Papabubbleのキャンディー。色々な種類があります。

その他、Etsyでプレゼントを調べ、”Godmother of…” “Godfather of…”とカスタマイズできるキーホルダーを発見。これを代父と代母へのプレゼントにすることも決定。また、キャンディの蓋にもカスタマイズしたシールを貼ることに決め、そのオーダーもしました。Etsyは基本的には海外のお店なので、商品が届くまでには2−3週間の時間が必要です。待っている間はちょっと心配でしたが、アメリカの奥地からマドリッドまで息子の洗礼の為のカスタマイズ商品が届いたかと思うと、それも含めてなんだか有難いという気持ちになりました。

作ったキーホルダー。届いた時はかなり嬉しかったです。

作ったキーホルダー。届いた時はかなり嬉しかったです。

さて、式当日。朝食を軽くいただいた後、子供に服を着せたりしていたらあっという間に洗礼まであとちょっと。自分の身支度はそこそこになってしまいましたが、息子もお気に入りの赤い車を持って出発です。教会までは徒歩5分。この距離なので、直前までゆっくりできたのも良かったです。

あまりに歩くのがゆっくりだったので、最終的にはパパに連れ去られる息子。

あまりに歩くのがゆっくりだったので、最終的にはパパに連れ去られる息子。赤い車は手放しません。

通常は洗礼式は数人を一つのミサでまとめて行うことが一般的ですが、今回は息子一人の為にミサを執り行ってくれました。大きい教会なので、隅にある小さな祭壇のある場所での式となりましたが、司祭が1時間以上もの式を息子一人の為にあげてくれたのにはビックリしました。また、途中で息子が動き回り、その息子を私たちが慌てて取り押さえようとする場面もありましたが、司祭が「子供はそのままにして話をしっかり聞いて下さい。子供は何も悪いことはしません。」と言ってくれたので、気になりながらもあたふたせずにいることができました。

司祭のお説教の間に動き回っている息子。

司祭のお説教の間に動き回っている息子。

洗礼の部分では、帆立貝の形をした銀の器に聖水が注がれ、司祭の祈りの後にその聖水が息子の頭に注がれました。かなりの量の水で息子は途中で嫌がったものの、なんとか無事に終わり、事なきを得ました。その後は、不満そうな顔の息子の頭に白い布が被せられ、司祭より聖香油(crisma)という祝福された油を額につけてもらい、洗礼が終了です。

聖水をかけている様子。かなりの量です。

聖水をかけている様子。かなりの量です。

 

どう見ても赤ん坊サイズの布を頭に被せられて。あまり嬉しそうではありません。

どう見ても赤ん坊サイズの布を頭に被せられて。あまり嬉しそうではありません。

この聖香油の塗布は、カトリックだけでなくギリシャ正教でも存在するそうですが、洗礼、堅信、司祭への叙階、司教への叙階の際に額につけてもらうことになっています。(義務ではありません。)この聖香油はオリーブオイルとお香が混ざったものですが、これだけ稀な物のせいかもしれませんが、今までに嗅いだことのないような非常に良い香りがしました。ちなみに、キリスト教には「病者の塗油」という儀式もありますが、この油には通常お香は含まれないそうです。

洗礼の後は皆で食事をし、(いつものことながら)レストランでの大合唱が…(笑)息子はお腹がペコペコだったようで、出されたお料理に入っていたアサリを迷わず口にパクッ。よく食べてくれました。皆と色々な話ができ、とても楽しいひと時となりました。

料理の後は我が家でゆっくりしました。息子が帰りの道でベビーカーで寝てくれた為、ようやく「大人の時間」の始まりです。スペインの伝統らしく、義父がこういう機会にとキューバの葉巻を買ってきたので、男性陣は皆で葉巻を吸うという時間も。私は葉巻の匂いは苦手ですが、こういう機会だからまぁ良しとしましょう。

男性陣の葉巻の会。

男性陣の葉巻の会。

全員参加です。

全員参加です。

夫が葉巻を吸い終わった後に気分が悪くなって部屋で休むというハプニングもありましたが、皆思い思いにくつろぎながら、夜の10時くらいまで楽しく過ごしました。食後だったこともあり、お客さんに出したのはシャンパンと私の作ったケーキ程度でしたが、大切な人たちと一緒に過ごす時間は何物にも代え難く、本当に良い思い出となりました。

我が家の手作りケーキ。とにかく春らしく、フルーツをふんだんにいれました。

我が家の手作りケーキ。とにかく春らしく、フルーツをふんだんにいれました。

プレゼントですが、義両親から息子にはレゴの飛行機セット、夫の叔父夫婦からは、健斗の為に素敵な貯金箱とお祝いのお金をいただきました。私たちから代父・代母へのキーホルダーも喜んでもらえ、文句がないようにとかおりの代父・代母に作った同じキーホルダーも好評を博しました。(念のため作っておいて良かったです。)

早速おもちゃで遊び始める子供たち。と、大人一名。

早速おもちゃで遊び始める子供たち。と、大人一名。

また、義両親より、子供達それぞれに銀の十字架のネックレス(crucifijo)をもらいました。スペインでは伝統的に、洗礼のお祝いには金のネックレスやメダイがプレゼントとして渡されます。ただ、最近ではそれを身につけている人たちは非常に少数ですし、私たちが「子供にわざわざ金のネックレスを買う必要はない」と言ったこともあり、最終的には銀になりました。シンプルなネックレスですがとても気に入りました。また、義母より私に「奇跡の聖母」のメダイも。鎖はこういったメダイにつける伝統的なデザインの物ですが、それがメダイにぴったり合っていて、義母と母からのプレゼントのように思われました。感謝でいっぱいです。

怒涛のように過ぎ去った洗礼式。息子の成長の節目をこうして皆と一緒に過ごせたことに感謝すると共に、これからも子供達の成長の一歩一歩を大切にして行きたいと感じました。

イベント終了!

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3 Comments

  1. Haruki さん、

    いつもお子様達に癒やしを頂いております
    私からも 一言お祝いを、”洗礼式、おめでとうございます。
    健やかな成長をお祈りしております。”

    式まできちんと段取りされてお子様達が将来 写真やこのブログを見た時には
    感動されることと思います。色づかいも素敵です。
    (そうそう、これまでのイベントでの食卓のテーブルセッティングもいつも素敵だなぁと
    思ってました!)

    日本は明日、子どもの日です♬

    • Pippiさん、

      コメントをありがとうございます。
      そして、お祝いの言葉もありがとうございます。

      準備をしている時は忙しくてバタバタしていましたが、こうしてイベントをこなす度に、家族との時間ってこういう「忙しい合間を縫って…」の積み重ねなんだと実感します。
      毎日を丁寧に生きて行きたいものです⭐️

      日本は子供の日ですね。こちらも、「健やかな成長」ですね。
      あ、兜を出さなければいけないと今になって気づきました!(日本ボケです!)
      教えていただいてありがとうございます!!