Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

娘の洗礼式

先週の土曜日に娘の洗礼式を行いました。

娘が洗礼を受けた教会の内部。

娘が洗礼を受けた教会の内部。

洗礼式とは、キリスト教の儀式の一つで、一般的には頭に聖水をかけて行います。(浸水と言って聖書の記述にある通りに体を水に沈める受洗方法もありますが、バプテスト教会意外ではそこまで一般的ではありません。)

洗礼を受けることの意味は、「アダムとイブの原罪(生まれながらに人間全てが持っている罪)及び、それまで犯した罪を清めて天国に行けるようにする」ことです。以前は、告解(自分の罪を司祭に告白して赦しを請い、その罪を清めてもらうこと)があまり一般的ではなかった為、多くの人は年を取ってから洗礼を受けたという話もありますが、それだけ罪を清めるということが重要視されていたのでしょう。

幼児洗礼は、告解が一般的になってから定着した洗礼の方法で、スペインではこれが一般的です。2011年の日記にも書きましたが、スペインでは子供を産んだ女性が回復した頃に、母と赤ん坊のお披露目を兼ねてこの儀式を行っていました。また、幼児洗礼は「子供の罪を清める」「子供の健やかな成長を祈る」行事であると同時に、「洗礼を授ける教会が子供の成長を見守る」という特別な意味もあります。教会にとっては、新たな教会の一員が増えた喜ばしい日と捉えられるようです。

私達は特に娘に洗礼を授けようとも思っていなかったのですが、偶然夫の職場の近くに「奇跡の聖母」教会(Basílica de la Virgen Milagrosa)を見つけました。実は、この聖母と私達にはかなり深い縁があります。義母が村に住んでいた頃に通った学校の名前は、この「奇跡の聖母」学校(Colegio de la Virgen Milagrosa)でした。現在は老人ホームとなり、義母の母が住んでいます。また、9年前になりますが、私の母が亡くなった時に、弔問客用にと皆で選んだカードも「奇跡の聖母」でした。さらに、夫の家族が日本旅行を楽しんだ際、長崎で見ず知らずの婦人グループから親切なもてなしを受けましたが、その人達が集う部屋にもこの「奇跡の聖母」が祀られていたとか。

このようなことがあり、「奇跡の聖母」教会を見つけた時に、夫に「かおりの洗礼をもしするなら、この教会がいいかも知れないね。」と伝えていました。ですが、最初の一年は、家のリフォームや引っ越しでバタバタし、あっという間に時間が経ってしまいました。

洗礼式の当日。娘が着ているコートは、娘のことを大好きな友人がミシンで縫って作ってくれました。

洗礼式の当日。娘が着ているコートは、娘のことを大好きな友人がミシンで縫って作ってくれました。

今回、娘の洗礼をするにあたり、まず私達の住む教区の教会より「許可状」をもらう必要がありました。スペインには沢山教会があるので、実は自分達の教会がどれなのかもよく知らなかった私達ですが、3回程その教会に足を運んだ後、無事に「許可状」をもらうことができました。実は、この教会はかなり立派な建物で、わざわざその教会で結婚式や洗礼式を挙げる人達もいるので、教会側は紹介状を書く事になれていなかった様子です。が、特に問題もなく手続きを終えることができました。

その後、休暇を取る直前に「洗礼を受ける子の親が参加する授業」に参加です。1時間ちょっとの短いコースでしたが、そこで色々な話を聞き、それなりに楽しい時間を過ごしました。ほとんどの親は子供が2−5ヶ月の時に洗礼を授けるので、大体は子連れで参加です。私達は娘をおばあちゃんに預けて来たのですが、その時に神父が5ヶ月程度の子供を見て、「大きい赤ちゃんですねぇ。」と言っているのを聞いてびっくり。うちの娘は既に1歳8ヶ月・・・巨大もいい所ですが・・・。

洗礼の前は、仕事もかなり忙しかった上、ちょうど日本からの友人の来訪等もあり、ほとんど準備には時間が割けませんでした。また、私のお腹が大きくなってきたせいか、娘はしきりに赤ちゃんを気にし始め、時にはかなり赤ちゃん返りに近い事をするようになり、なかなかママを解放してくれません。娘を寝かしつけ、食事の片付けをし、ようやく自分の時間が取れたと思ったら眠りこけてしまうこともしばしば。でも、洗礼は着実に近づいてきました。

娘の洗礼用にお願いしたシール。これも以前にご紹介したEtsyで見つけました。

娘の洗礼用にお願いしたシール。これも以前にご紹介したEtsyで見つけました。

洗礼式の3日前に義母と日本からの友人が到着。義母に娘の代母(ゴッドファーザー、スペイン語ではmadrina)をお願いしたので、彼女は娘に何かをプレゼントしたいらしいとのこと。最終的には一緒に三輪車を選びました。洗礼式の前日には、代父(ゴッドファーザー、スペイン語ではpadrino)をお願いした友人もスイスから到着。義父も到着し、にぎやかな中での夕飯となりました。

さて、洗礼式当日。式は夕方5時からだった為、ゆっくり朝食を取った後、私は急いで皆へのプレゼントの準備。前もって買っておいたMarius Fabreというフランスの石けんのシールを一部はがし、娘の為に作ったシールを代わりに貼付けます。それを薄い紙でくるんで完了。また、アーモンドと松の実のドラジェを大量に買い込み、これもセロファン紙でくるんでリボンで止め、娘のシールを付けました。皆にちょっとしたカードも付け、そこに「娘からのメッセージ」を書き込みます。単純作業ですが、10名以上のプレゼントとなるとそれなりに時間がかかり、お昼過ぎにようやく完了です。

皆にあげたプレゼント。式直前に完成です。

皆にあげたプレゼント。式直前に完成です。

娘に食事をあげたり、式の洋服を着せたりしているうちに、いつもの通り自分達の準備は適当になってしまいましたが・・・何とか皆で無事に教会に到着です。

教会の中で。最前列は、洗礼を受ける赤ちゃん3人とその両親、代父・代母が座りました。

教会の中で。最前列は、洗礼を受ける赤ちゃん3人とその両親、代父・代母が座りました。

洗礼式は一般のミサとは別になっており、私達の式にはかおりの他に2人の赤ちゃんがいました。もちろん、その他沢山の親戚や友人が来ており、その多さには正直びっくりしてしまいました。(赤ちゃん一人の洗礼の為に、30−50人が参加するんですね。ミサと一緒にしない理由が分かりました。)

一応おとなしくしていた娘と、温かい目(内心ハラハラ)で見守る家族。

一応おとなしくしていた娘と、温かい目(内心ハラハラ)で見守る家族。

司祭が「あなた達は、Kaoriがキリスト教の信仰の道を歩むことを望みますか?」と言った一連の質問をした後、首に聖油で十字を切りました。その後、司祭が洗礼に関わる聖書の一節を読み、皆に洗礼の意義について説明してくれました。その後、いよいよ洗礼です。娘と一緒に両親と代父・代母が祭壇前まで上り、夫が洗礼の台の上で娘を横に抱えている間に、司祭が頭に聖水をかけます。終わる時に、代母がタオルで頭をそっと拭いてあげて終了。娘は頭に水をかけられて涙目になりましたが、泣き叫ぶこともなく、そこは何事もなく終わりました。

聖水を頭にかける直前。

聖水を頭にかける直前。

夫が娘をしっかりかかえて横にします。司祭が帆立貝の形をした銀のお皿で聖水を頭にかけます。

夫が娘をしっかりかかえて横にします。司祭が帆立貝の形をした銀のお皿で聖水を頭にかけます。

半泣き状態でしたが、よく頑張りました。

半泣き状態でしたが、よく頑張りました。

ですが、その後罪を清められた子供達が刺繍の入った被り物を被る時点で、それが気に入らなかったようで、いやいやをして下に投げようとしましたが。こういった娘の様子を見て、夫はしみじみと「子供が小さいうちに洗礼を受けさせる意味が分かったよ。」と言っていました。

刺繍の施された布の帽子を被るのを嫌がる娘。他の赤ちゃんは無抵抗でした。

刺繍の施された布の帽子を被るのを嫌がる娘。他の赤ちゃんは無抵抗でした。

娘が外で遊んでいるうちに、記念の家族写真をパチリ。

娘が外で遊んでいるうちに、記念の家族写真をパチリ。

式の後に友人と一緒に。娘もようやくリラックスです。

式の後に友人と一緒に。娘もようやくリラックスです。

何とか洗礼式を終えた後は、我が家に戻って皆で軽く食事をつまみながらお酒でお祝いです。良い子にしていたかおりには、おばあちゃんより三輪車。これは義弟が組み立ててくれました。代父からは、ホワイトゴールドの素敵なブレスレットのプレゼントです。娘の名前と誕生日を彫ってあげる予定です。そして、日本から来てくれた友人からは、日本の絵本を2冊。また、当日のプレゼントではありませんが、この日の為に友人の女性からは、彼女の家族が代々使うという洗礼用のドレスを貸してもらい、しかもコートを作ってもらいました。本当に皆の気持ちが嬉しいです。

三輪車の包みを嬉しそうに開ける娘。皆からのそれぞれのプレゼントが素敵で、本当に私も感謝でいっぱいの日でした。

三輪車の包みを嬉しそうに開ける娘。皆からのそれぞれのプレゼントが素敵で、本当に私も感謝でいっぱいの日でした。

私達から皆には、上に書いたプレゼントがありましたが、代母には皮のハンドバッグ、代父には銀のカフリンクス(シャツのボタン止め?)と娘の写真の入った写真立て、そしてクリスマスのお菓子をプレゼントしました。

夜はお手伝いさんに来てもらい、娘をお手伝いさんに預けて皆でレストランに。近くのベルギー料理のレストランで皆とゆっくり過ごしました。このレストラン探しもそれなりに大変でしたが、最終的に選んだお店を皆に喜んでもらい、本当に嬉しかったです。ちなみに、こういった場では代父・代母が費用を負担するのが伝統的ですが、今回は私達が皆を招待する形にしました。

準備やらその他で忙しい10月でしたが、こういう形で皆と一緒に娘の洗礼を祝うことができ、本当に良い思い出になりました。華美なものや身の丈に合わないものは苦手ですが、せっかく来てもらうお客さんに喜んでもらえるようにと思って考えると、やはり中途半端なものを準備するのも本意ではありません。アイディアを絞り、時間をかけることは大事ですね。さてさて、次に生まれてくる子供の洗礼はどうなることでしょうか?!

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3 Comments

  1. 前回の記事で「もうすぐ娘の洗礼式」とあったので、記事のアップを楽しみにしていました。
    無事に洗礼式を終えられ、本当におめでとうございます。

    私は伝統的なものや儀式などが好きで、大切にすべしと思っているので、自分の子には洗礼式や初聖体拝礼など一通りの事をしたいと思っていましたが、本当は深い意味があるんですね。ミーハーな自分をちょっと反省しました。夫は反対に、興味がないとのことです。

    かおりちゃんは本当に周りの人から愛されていますね。
    洗礼式は子どもを見守ってくれる人たちと喜びを分かち合い、感謝をする場でもあるんだなとブログを読んで思いました。

    • チェスカさん

      私も気がついたら洗礼を受けていたので、実際の深い意味や歴史的な経緯は大きくなってから知りました(笑)
      日本にいた頃、私も特にお宮参り等に興味があった訳ではないので、文化の一部としてキリスト教に触れてきたチェスカさんの旦那様のご意見も分かります。
      でも、子供の成長を祝う行事の一つとして、また、子供に最良のものを願う親の気持ちとして、今回洗礼を受けさせてよかったなと思っています。
      これから頻繁に教会に行くかというと、まだそこまでは分からないというのが正直な気持ちですが。