学校
9月より娘の学校通いが始まりました。スペイン語では「学校」は「コレヒオ(colegio)」と呼ばれますが、日本語の「学校」とは違い、そこには通常幼稚園から高校までが含まれます。
という訳で、娘が行っているのはあくまで「幼稚園」ですが、スペイン語では分けていないこともあり、いつも娘には「学校」という言葉を使っています。
1.学校選び
まずは学校選びです。
夫も私もスペインの教育事情には疎い事もあり、私が近くの学校を回って直接先生達と話した時期がありました。
飛び込みで話をすると、意外と学校の校長先生が直々に会ってくれたりして、嬉しい発見もありました。
スペインでは、学校は公立(público)と私立(privado)の他、私立の中でも特殊な「コンセルタード(concertado)」と呼ばれる学校があります。では、違いは何でしょうか?
● 公立:無宗教で、国から補助を受け、その地域の県・市等で設立・運営されている学校。
● コンセルタード:私立の学校であるものの、政府の提示するある一定の条件を満たすことにより、公的な補助金を受けている。定員や学生の選抜方法等、授業内容の一部に政府の基準を当てはめる必要があるが、宗教の自由あり。(スペインなので、ほとんどの学校はキリスト教。)多くの学校では、高校から私立並の授業料を支払うように。
● 私立:一種の教育というサービスを提供する会社であり、費用はすべて学生の親達が支払う授業料や維持費によってまかなわれている。授業内容や定員、学生の選抜方法等は学校が自由に決定することができる。
日本の例に漏れず、スペインにも所謂「エリート学校」というのがあるようですが、日本程の受験競争はないように思われます。
例えば、我が家の近くには昨年最優秀の成績を取ったという生徒がいた学校がありますが、皆が何としてもそこに子供達を入れたいか、というと、どうもそうではないようでした。
私立の学校では、サッカー選手の子供や王族が行く学校の話は時々耳にしますが、ほとんどはインターナショナルスクールばかりです。この辺りも、日本とは違う所かも知れません。
私達が特に重視したのは、学校が家から近いかどうかということ。
「遠い学校にわざわざ通わせると友達と遊ぶ機会が減ってしまう」という話を聞いたこと、我が家の近くに沢山質実剛健な学校があったことが理由です。
それら近場の学校の説明会にも参加して検討した結果、第1〜3希望を決めました。
2.入学申請
学校を決めた後は、子供を入れたい学校に入学申請の用紙を提出します。
私達は希望の入学先が全てコンセルタードだったので、マドリッド県で指定された用紙に記入し、受付期間中に第一希望の学校に提出しました。
ここでは絶対二校以上に同時に申請書を出してはいけないと規定されており、万が一二つの学校に申請を出し、両方から受入通知が届いた場合には、両方ともキャンセルされることになっています。(厳しいです。)
では、学校にとって入学を決める条件とは何でしょうか?
これは、私立やコンセルタードの場合には、条件は公平であるべきとの理由で、ポイント制が採られています。
マドリッド市に住んでいれば2ポイント、さらに職場から近かったり同じ地区に住んでいたりすれば0.5ポイント加算と行った具合にポイントを足して行き、上位の子供達から入学許可を与える形です。
他のポイント加算の理由は、経済的な問題(家庭の収入が●●ユーロ以下)、父子/母子家庭かどうか、親がその学校の卒業生かどうか、親が学校で働いているかどうか等になります。
ちなみに、親がその学校の卒業生だと4ポイント程加算されることになっているので、子供の入学がほぼ保証されることになっています。この辺りが、本当にスペインらしいなと思いました。また、これは聞いた話ですが、子供を何としても希望の学校に入れたい親は、離婚をして母子家庭にすることでポイントを稼ぐこともあるとか。すごいです。
結果が公表される時にはそのポイントも貼り出される為、異議があれば学校に連絡して内容を再検討してもらうことも可能です。
我が家の場合は、ポイントが「近くに住んでいる」という部分だけだったのでヒヤヒヤでしたが、何とか最後の方で入学許可が出てホッとしました。
実は、この結果が出たのが日本に戻る一日前。娘の学校が決まらないまま休暇は厳しいなぁ…と思っていたので、本当に安堵したのを覚えています。
3.入学前の準備
娘が入学する1ヶ月程前に学校から連絡があり、証明写真を持って行くこと、マジックテープで開閉するタイプの黒い革靴を買うこと、制服や運動着、教材の注文方法等の説明を受けました。
スペインはなかなか適当なので、黒い靴を入学1週間前に買おうとした人達は、どこでも売り切れでビックリしたという話を聞きました。
また、制服を作る業者が替わったことで以前の制服のサイズで注文すると大きさが異なり、入学当日にダブダブの服を着ている子、制服がない子もいました。私は同じ学校に行く娘の遊び友達のママから、無事その子の制服のスカートを借りて事無きを得ましたが、当日は制服の子もいればトレーナーの子もいる…という、日本ではおよそ考えられない状況でした(笑)学校の先生もそれに慣れているようで、保護者にも「当分はどちらでも良いです。」と言ったとか。
4.学校開始と送り迎え
娘が制服を着ると、やっぱり急にお姉さんになったように見えて、母親として感慨深いものがありました。
とは言え、学校初日から娘の送り役は夫。夫に様子を見てもらうことにしました。
夫が娘を連れていった所、親と離れて泣く子供、子供と離れて泣く親…色々入り乱れてすごいことになっていたそうです。
夫は、「たかが子供を2−3時間預けるだけで、何で母親まで泣いているんだ。それを一生懸命慰める父親っていうのもおかしい。」となかなか厳し目です。
子供の時間割は、学校が始まった9月は8:55〜12:45でしたが、10月からは本格的な時間割に変わり、8:55〜12:45、そこでお昼を挟み、午後の部が14:55〜16:25です。ほとんどの子供達は学校で給食を食べ、その後には1時間程お昼寝をし、午後の部に参加して帰るという仕組みです。(お昼寝は幼稚園の年少のみ。)
我が家はお手伝いさんがいる関係で、12:45に迎えに行ってもらい、子供二人は家でお昼、そして学校にまた送ってもらうということをしています。
行き帰りもあるので、娘はもうお昼寝はしていません。ちょっと可哀想かなとも思いましたが、このお昼寝制度があるのは我が家の近くではこの学校のみであること、娘はクラスで一番のお姉さんであること(こちらの学校では入学の年に三歳になる子供が対象なので、1月生まれの娘が一番年上になります)等から、また大丈夫だろうと見込んでやりました。
16:30に学校が終わった時の迎えは私の仕事です。今までは短縮労働だったにも関わらず毎日残業をしていましたが、今はどうしても残業は無理ということで、本当にお昼もそっちのけで仕事をし、定時になったらダッシュで学校に向かうということを繰り返しています。大変なこともありますが、こうして時間を作ってみて、あらためて子供達との時間を取る事の大切さを感じています。
お手伝いさんに16:30に迎えに行ってもらうこともたまーにありますが、そうするとお手伝いさんは息子と一緒に行かなければ行けない為、2歳未満の息子のお昼寝のリズムが狂ってしまうことになります。そういうこともあり、できるだけ私が行くようにしています。
ちなみに、「事情があってどうしても定時に仕事を抜けなければいけない」と上司に行ってから、仕事のサポートを以前より受けるようになりました。以前はなんだかんだ言って私が残業をしていたので、そのままの状態になっていたんだなぁ、と実感した出来事でした。
5.学校行事
学校が始まると実感するのが数々の学校行事です。日本よりは少ないと思いますが、それでも日本ではないようなものもいくつかあり、こちらで教育を受けていない私にとっては模索の日々です。
例えば、スペインでは入学式(入園式)はありません。ただ、入学の日にちと時間が決まっており、その日に子供を連れて行くと沢山の親子連れがいる…と、そんな感じで終わりました。節目節目を大切にする日本と比べると、やはり大きな違いです。
また、運動会もありませんし、親子学級のようなものもありません。ですので、娘に「学校はどうだった?」と言って話してもらわないと、正直何をしているのかほとんど分かりません。(そして、娘は気が向いた時には話してくれますが、ほとんどの場合には「お歌を歌ったー。」程度で終わります。)
スペインで良かったと思う事は、日本程の几帳面さが要求されないことでしょうか。日本では母親の手作りの通園バッグ、毎日の可愛らしいお弁当等の話を聞くので、好きなバッグを通園バッグにできること、適当なタッパーにフルーツを入れておやつにできること等の手軽さに感謝しています。それでも、私はかなりしっかりやっている方と言われますので、これはありがたいです(笑)
6.感想
この3ヶ月半娘を学校に通わせてみて思う事。
まずは、子供は順応性が高いので、新しい環境にも比較的慣れるということでしょうか。それでも、新しい環境というのは何かとストレスが多いもの。子供にとっては、初めて家の外で規則に従う生活をすることなので、やはり大変な感じは否めません。時には寝ながら泣いている娘を見て、ちょっと心配になったこともありました。が、学校ではとても良い子にしているようです。
次に特筆すべきは、ウイルスの蔓延。娘が学校に行ってからというもの、娘が病気になり、息子が病気になり、親もお手伝いさんも病気になり、さらに風邪で鼻がつまって寝られない息子が娘を起こし、娘が咳のし過ぎで戻したり…と、本当に色々なことがありました。子供達を病院に連れて行くのは大体夫の役目ですが、夫が出張の時には私一人で対応する事になる為、夜中に息子を救急病院に連れて行き、義弟に我が家に来てもらって娘と待機してもらうということもありました。こういったことがあると、やはり次の日の仕事がキツかったりもしますが、それは子供を持つ全ての親が経験することでしょう。仕方ありません。でも、やっぱり辛いです!
そして、最後に娘のスペイン語のボキャブラリーの増加と、新しい世界の広がりについて。
学校に入るということは、子供にとっての新しい世界が広がることでもあります。親が知らない子供の領域が少しずつ広がっていくことなので、嬉しい反面、親としてどうやって子供の自立に手を貸して行くのかということを考えるようになります。今は「ママが一番」の時期で、時々「パパの方にも行ってー!」と思う事もありますが、こういう時期をしっかり楽しんでおかなければとも思います。
また、以前は私とはずっと日本語で話していた娘ですが、最近は気を抜くとスペイン語に変わってしまうことも。親としては、多少面倒だと思う事があっても、できるだけ日本語を維持していけるように手を貸して行きたいものです。
では、学校行事の詳細はまたの機会にします!
Haruki さん
詳細の学校紹介をありがとう
>Chiimさん、
どういたしまして!
Harukiさん
詳細な学校入学紹介ありがとうございました。
私は今年、夫のMBA取得のため家族でマドリードに住み始め、2年滞在の予定です。
来年2月に3歳になる娘がおり、来年はできれば学校に入れたいと思ってはいるものの、ちょっと難しいのかなと思っています。スペイン語はトラベル会話に毛が生えた程度しかはなせませんし。
近くに公立校があるので、ダメ元で活動してみようと思っていますが、Harukiさんはいつ頃から活動を始めたでしょうか?
お忙しいとは思いますが、大体のスケジュールをお手すきの際にご紹介いただけますと大変助かります。
chimさん、
もしこちらの学校にご興味があるようでしたら、まずは学校に直接足を運んで話を聞くのが一番だと思います。
活動自体は入学の年に開始ですが、学校が開いている間に質問をすれば、学校の説明会の日程等も教えてくれます。
何よりも、スペインの学校の制度や他の子供達の様子を知るには、直接行って受付の人か担当の先生と話をするのが一番ですよ。学校の雰囲気も分かりますし、夫々の人の予備知識レベルに合わせて説明をしてくれますので。
私が見た学校では、大体説明会が2〜3月にあり、semana santa(イースター前の聖週間。今年は4月初めです。)の前後に申込期間が設けられ、5月末に結果が通知されます。
公立の学校をご希望でしたら、申込の詳細や申込用紙はマドリッド市のHP(http://www.madrid.org)で知る事ができますので、時々目を通してみて下さい。
お子さんが、ご希望の学校に行けるとよいですね★
お返事ありがとうございました。
直接学校に行ってみようと思います。
お仕事と育児の両立は本当に大変だと思いますが、そんな中このようなブログを書いていただいて大変助かりました。
Chimさん、
お役に立てて何よりです。
学校選びは一仕事ですが、色々な人と知り合うことができて、これまた良い思い出になると思いますよ。
また何かありましたらいつでもどうぞ★