Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

夫々の視点

夏に飲むと言えば、やはりtinto de verano。友人と立ち寄ったバルで夏を惜しむように。

夏に飲むと言えば、やはりtinto de verano。友人と立ち寄ったバルで夏を惜しむように。

スペインに来て何が良かったかと聞かれることがたまにあります。パッと思いつくような良い事もあれば、「あの時は辛かった」と思うような苦労も沢山あります。話しているうちに、他の人にとって分かりやすい「良かったこと」と、自分が本当に感じる「良かったこと」との間には微妙なズレがあることを薄々と感じるようになりました。では、私にとって何が本当に良かったのか。考えてみると、物事を見る視点が色々と変化することによって、それぞれの良さが分かるようになった点だと思います。

その一例が、主婦のあり方について感じることです。

スペインに来てから 、時々夫の仕事での活躍ぶりを嬉しそうに話す女性を見て、「夫のことを自分の手柄のように話すのは見苦しいなぁ」「私は男性と同じように仕事をこなして、自分の実績で評価してもらおう」等と思った事が何回かありました。「自分の実績で評価してもらおう」と特別に意識して何かをしていた訳ではありませんが、努力を評価してもらえるという色々な経験があったことに加え、自慢話をするのは醜いという日本的な考え方もあったのでしょう。ひょっとしたら、まだまだ血気盛んな20代だったからかも知れません(笑)

ですが、最初は頭から受け入れられなかったこの「夫の仕事の活躍ぶりを嬉しそうに話す女性」達に、気がついたら一種の可愛らしさまで感じるようになってきました。それは、こちらの多くの専業主婦に共通の、家庭に注ぐエネルギーの大きさに驚かされたからです。

マドリッドのオペラ座から見る王宮の眺め。陽射しが強かったです。

マドリッドのオペラ座から見る王宮の眺め。陽射しが強かったです。

全ての女性とは言いませんが、こちらの多くの主婦は「完璧主義」です。料理もそれなりに作り、週末には友人や両親、兄弟、カップルと過ごしたりすることが一般的です。さらに家の整理や掃除、洋服のアイロン等を重視し、常に整理整頓されたスペースを心がけ、時間がかけられなければ人を雇って掃除やアイロンの一部をお願いします。私の知り合いの中には、お手伝いさんを雇う余裕はないと言って、休日に7時起床で 掃除・アイロンをする人達もいます。つまり、「家が汚くても落ち着く 」という選択肢が普通はないのです。日本ではきれい好きで通っていた私でさえ、当初はこのやり方にげんなりしてしまいました。それでも、一度整理整頓された環境に慣れると自然と維持しようとする気持ちになりますし、整頓されたスペースと心の落ち着きが深く関係しているような気にもなってくるから不思議です。

では、この女性達の驚くようなエネルギーがどこから出て来るかと言うと、基本的には「夫が大好き」という愛情からのようです。スペイン人は情に厚い人が多いですが、夫が大好きと言ったことを口にする女性が多いことに、今更ながら感心させられることがよくあります。「夫が家に帰ってくると、家の空気が変わる」「私はこの夫に会えて本当に良かったと思っているの」「私達は二人ですごく幸せ」「一週間に一回は夫と二人きりの時間を取るようにしているの」「私がお洒落をすると夫が嬉しそうだから」等の言葉を聞くと、こちらまで幸せになる感じですよね。そして、そういう女性のパートナーというのは、いつもその女性のことを魅力的だと思っているのが見ていて分かるのです。確かに、これは女性としては嬉しいことですね。

以上のような話を何度も聞いていたある日、「このような幸せなカップルの中では、夫の仕事も夫婦の共通のプロジェクトであり、夫の仕事の活躍ぶりは妻の努力の結果でもある。それは夫も認識済みなんだ。」ということが、まさにストンと腑に落ちるような感じで理解できたのです。

去年は日西友好年で、今年はそれをしめくくるイベントが開催されました。

去年は日西友好年で、今年はそれをしめくくるイベントが開催されました。

日本では、もちろん仲の良い夫婦も沢山いますし、細かい所まで手が届くスーパー主婦も沢山いらっしゃると思います。が、エネルギーの源泉が微妙に違うように私には思われるのです。もっと穏やかな家族全体に対する愛情がベースとでもいいましょうか。その為か、エネルギーの爆発のような掃除魔・アイロン魔の専業主婦の日本の方を私はまだ知りません(笑)

このようなことをちょっと考えるだけで、スペインの「夫の仕事自慢」も微笑ましく写り、そこまで夫を支えて頑張っている女性の働きぶりに敬意を払わずにはいられなくなりました。

個人的な体験から言うと、私は一時期スペインの専業主婦のように全てをやろうとしてパンクしてしまったことがありました。良いのか悪いのか、完璧な主婦の鑑の義母から色々なことを学び、スペインの専業主婦並みに掃除やアイロンができるようになった反面、どんなにエネルギーがあっても、そもそも仕事をしていて時間が少ないので思うように家事や育児ができず、 さらに(スペインの伝統的な主婦らしく?!)夫に頼ることにも後ろめたささえ感じるようになっていたからだと思います。

支倉常長を主人公としたテーマの音楽。本当に感動的でした。

支倉常長を主人公としたテーマの音楽。本当に感動的でした。

この経験から色々な学びがあり、今は夫にもサポートをどんどんお願いしています。我が家は共働きなので、子供が寝るまでは「外の仕事か家の仕事に二人とも関わる」ということにしています。気がつくと夫がふらふらとテレビに向かうこともありますが、そこで呼び戻すのもこちらの役目です(笑)私が休まないうちは夫も休まないという前提ながら、私自身家事にのめりこみすぎないようにコントロールをし、お互いに休む時間を取るように毎日試行錯誤の日々です。

さて、日本のお母さん達 はどうでしょうか?ちょっと興味があります。

Tagged as: , ,

2 Comments

  1. 初めまして。
    突然のコメントで失礼します。
    フクニシヨウスケと申します。

    私事ですが、来週末にマドリッドへ行きます。
    恥ずかしながら、30歳を超えて初めての一人海外旅行です。(ツアーや家族旅行は数回)
    英語も話せないですし、もちろんスペイン語も話せません。日本語も怪しい。。。

    なぜ、マドリッドは行くかと言うとエルクラシコを観戦するためです!
    私の小さいころからの夢を叶えるためだけに、マドリッドへ行くことを決めました。
    「生でエルクラシコを観戦したい!」この想いだけで飛行機やらホテルを手配してきましたが、冷静になってみると右も左もわからない国・場所に行って、本当に大丈夫だろうか?っと不安になってきました。
    そして、ネットでいろいろと検索してるうちに辿り着いたのが、はるきさんのブログなのです。
    もしよければアドバイス、おすすめ観光地など教えて頂けると幸いです。

    ちなみに弾丸で行くので、25日お昼にマドリッドに着いてそのままエルクラシコ観戦。
    26日は1日フリー。
    27日の昼過ぎにマドリッド出発で帰国する予定です。

    いきなりのコメントで申し訳ないですが、よろしくお願いします。

    • >フクニシ様

      メッセージをありがとうございます。
      私の兄もサッカーが大好きなので、フクニシ様のお気持ちや行動力の源泉のサッカーを愛する心がよく分かります。
      しかも、エル・クラシコの初日ですよね?興奮が伝わってきます。

      さて、観光地ですが、もし今回が初めてでゆっくりご自分のペースで観光を楽しまれたいということでしたら、レティーロ公園(El Retiro)の散歩をお薦めします。リラックスできると思いますし、思った以上に色々見所がありますよ。
      日本から来る私の友人で、この公園で昔からある木々、ヨーロッパ式の庭園や建築物、公園で過ごしている人達を見ただけで「人生観が変わった」という人もいました。

      美術がお好きでしたら、ソフィア王妃芸術センター(Centro de Arte Reina Sofía)のゲルニカは是非見てみて下さい。
      東京にも大型の壁画があると思いますが、実物を見るとその迫力に驚かされます。
      クラシックな絵画や彫刻がお好きでしたら、プラド美術館のコレクションも非常に充実していますよ。

      また、サッカーがお好きでしたら、プラド美術館の近くにあるシベレス広場(Plaza de Cibeles)も立ち寄ってみて下さい。
      レアルマドリッドが勝つとここの噴水に入ろうとする人達が沢山いて、日本の道頓堀に通ずるものがありますよ。

      では、マドリッド滞在をどうぞ楽しんで下さい。