Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

詩集の出版記念イベント

詩人ラウル・カンポイ本人による朗読。

詩人ラウル・カンポイ本人による朗読。

友人の友人であるラウル・カンポイ(Raúl Campoy)という人の詩集”Donde casi amanece (夜が明けようとする場所)” が、大手出版社より出版されることになりました。その出版を記念してのイベントがスペイン文筆家・芸術家協会(Asociación de Escritores y Artistas Españoles)で開催されるということで、その友人と一緒に記念イベントに参加してきました。

このスペイン文筆家・芸術家協会とは、「優れた作品を鑑賞し、その価値を共有することで、分筆・芸術活動の発展に貢献する」という目的で1871年に創設された機関です。有名な作家もこの協会に名前を連ねており、改めてこういった機関が芸術を育てるんだなぁ・・・と、その重要性を感じました。

歴史のあるこじんまりとした建物でした。

歴史のあるこじんまりとした建物でした。

友人と軽くバルで一杯飲んでタパスをいただいてから、イベントに参加。

最初にラウル・カンポイの紹介と、彼の詩の美しさについて、別の詩人が説明。「素晴らしい詩というのは、読者が深く共感できるものであり、同時に、読者が詩人の内面について読みながら自分の内面を見つめるものです。彼の作品は、表現力の深さだけでなく、この深い共感を呼び起こす強さがあります。」というコメントが心に響きました。

壁には様々な作家や芸術家の絵が飾られています。

壁には様々な作家や芸術家の絵が飾られています。

紹介の後に、本人が詩の朗読を始めます。この朗読が本当に美しく、彼の詩の存在感にただただ感動してしまいました。詩を書いた本人の朗読というのは、読むだけでは触れられない部分まで見えてくるようですね。以前ご紹介したスペインの詩人ベッケル(Becquer)の瑞々しい感性の詩と重なる部分が多く、久々に「ビジネスのスペイン語」「明瞭なスペイン語」ではなく、「感性のスペイン語」「深みのあるスペイン語」に触れられて大満足でした。特に、いくつかの詩では、思わず鳥肌が立つ程感動してしまいました。途中ではギターの演奏も少し入り、さらに情緒が感じられるような構成になっていました。(個人的には、朗読とギター演奏は分けたパターンが好きでしたが。)

本当にギターが上手でした。今度は彼の演奏会にも行ってみたいです。

本当にギターが上手でした。今度は彼の演奏会にも行ってみたいです。

私の拙い訳ですが、気に入ったものを一つ。

<Detrás del Sol>

Ser noche:
encogerme como un planeta frío
y esperar a que desespere el silencio.
Ser noche:
como un río sonámbulo
como un asteroide loco.

Hoy he querido ser noche.

Para olvidar la luz
que nos cerró la pupila
y revolucionó las arterias
y exterminó la poca inmortalidad
que nos quedaba.

Ser noche
ser espalda
ser espanto,
para esconderme
para esconderte.

<太陽の後ろで>

夜とは
冷たい惑星のように縮こまり
静寂が絶望するのを待ち望むこと

夜とは
夢遊病の川のよう
狂った小惑星のよう

今日僕は夜になりたかった

光を忘れるために
僕たちの瞳を閉じた光を
動脈を動かした光を
僕たちに残されたいくばくかの不死を
奪い去った光を

夜になりたかった
背中に
恐怖に
自分を隠すために
あなたを隠すために

本の表紙の絵も味わい深いです。

本の表紙の絵も味わい深いです。

早速本を買い、彼に挨拶をしてサインをもらいました。そして、イベント終了後は近くのバルでラウルも含めた皆と一緒にまた一杯。その後は場所を変えてさらにもう一杯。。。最後の場所はタバコの煙がもうもうと立ちこめていたので、12時半位で私はノックアウト・・・。とはいえ、とても楽しいひと時でした。

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2 Comments

  1. この施設素敵ですね。色々な本のプレゼンテーションに行ったことがありますが、ここは行ったことがありません。しっかりチェックさせていただきました!

    私はValladolidへ行くようになってから、スペイン語の違いを多大に感じます。マドリードのスペイン語とかなり違って、やっぱりカスティーリャ人の言葉なのだなぁと実感しました。どんな所へ行っても人々が使う言葉が違うんです。ある名誉教授のスピーチなどは、こんな美しいスペイン語は聞いたことがないと、スペインに住み始めて20年以上たってからしみじみと感じました。マドリードでは美しいスペイン語になかなか巡り合えないことが残念です。

    • 朗読会の部屋は小さかったですが、歴史が感じられてとても素敵でしたよ。
      特に、その部屋の隣にあった控えの部屋が歴史が感じられて素敵でした。

      私の義母はレオンの出身で、ちょうどマドリッドからValladolidを経由してさらに北に向かった所になります。
      Chihoさんがおっしゃる通り、カスティーリャ・イ・レオンのスペイン語は昔の言葉や表現が残っていて、しかも明瞭な発音。格調高い感じがしますね。
      彼らの言い切ってしまう話し方が時々ぶっきらぼうに聞こえますが、明瞭で伝統に裏打ちされた深みのようなものがあり、私はとても好きです。
      そして、マドリードで生活していると、やはり普通の会話で素敵な言葉が使われる機会は少ないなと感じますね。

      私がスペイン語の美しさに感銘を受けた人は、義父、ある友人の父親、大学時代にお世話になった一人の教授くらいでしょうか。
      やはり、そういう人達は教育や文章の推敲に携わってきた人達で、本当に美しいスペイン語を話そうと努力してきた人達ですね。(とは言え、日常会話では俗語を使ったりもするのですが。)
      私自身、スペイン語もそうですが、美しい日本語を書けるように日々努力したいものです。