Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

友人の訪問と日本社会

友人Kと一緒に歩いたレティロ公園内のクリスタル宮殿。

友人Kと一緒に歩いたレティロ公園内のクリスタル宮殿。

大学時代の友人Kがスペインに来てくれました。彼女は、イギリスやシンガポールでの海外生活をした後に日本の大学を卒業した女性で、知性、教養、優しさ、心配り等全てが揃った、バランス感覚が非常に良い女性です。偶然2001年にゴールドマン・サックスのプログラムで知り合い、今まで交流が続く友人の一人です。2009年に一緒にトレドを旅行した友人Sサッカー観戦をした友人Tと同様、このグループの人達はバイタリティに富む人が多く、いつ会っても色々な話ができるのが楽しい所です。

彼女の弟さんは海外勤務ということで、家族皆で会って一緒に時間を過ごすためにバルセロナを選び、その後彼女はマドリッドに来てくれました。久々に会ったKは以前と同じように笑顔が絶えず、観光というより私が日常に見るものを楽しみたいというスタンスだったので、こちらもそれに甘えてやりたい放題してしまいましたが、とても楽しいひと時となりました。

初日はまず我が家に来てもらい、家族を紹介。彼女からは、かおりと健斗に日本の絵本、ユニクロのヒートテックの服(重宝です!)、日本食の食材等をお土産にいただきました。さすが海外生活の長かった彼女、かゆい所に手が届く品の数々に感嘆してしまいました。

次の日は、ベビーカーに乗った息子を連れて彼女を迎えにティッセン美術館に。ティッセンは私も大好きな美術館の一つで、2008年2012年にもこの美術館についての日記を書いています。彼女も思った以上にコレクションが充実していてとても楽しかったとのこと、こちらまで嬉しくなりました。

その後は、二人(とベビーカー)で娘のいる公園へ。ちょうど娘がおじいちゃんと一緒に遊んでいたので、そこで少し休んで周りの景色を楽しみ、二人で色々な話をしました。特に何をするという訳でもありませんでしたが、広い景色を眺めつつ、数年の空白を埋めるように話ができたのも良い思い出です。

公園で、上にある木の実を取ろうとする私を助けてくれました。ありがとう!

公園で、上にある木の実を取ろうとする私を助けてくれました。ありがとう!

子供を置いてからはちょっとした観光スポットを通りながら話をし、私の好きなバルで少し飲んで話をし、レティロ公園を歩きながら話をし、喫茶店に行って話をし・・・と、本当に話題が尽きませんでした。二人で私の好きな洋服のお店に入り、私が彼女に似合いそうな洋服をお見立てしたこと、ちょっとした星のネックレスをプレゼントしたこと等、お土産もでき、私も満足の時間でした。

カフェテリアのケーキとネックレス。友人撮影。

カフェテリアのケーキとネックレス。友人撮影。

この友人は、帰国子女で英語はもちろんペラペラ。さらに、京大を卒業した後に修士課程もも修め、今はバリバリのキャリアウーマンとして働くとても優秀な女性です。さらに、バランス感覚に優れて心優しい人なので、一緒にいて本当に楽しいと思える相手です。その彼女が、日本にいて何とも言えない虚しさやプレッシャーを感じる瞬間があると言っていたのが心に残りました。30代で結婚していない女性の場合、「結婚していないのなら、何か問題があるに違いない」という目で見られがちなこと、真夜中まで残業をするのが当たり前の生活で、時には朝の4時〜5時まで仕事をする日が続く為、このような仕事のリズムに不安を感じていること、早く切り上げようと思ってもそれができない環境ができあがっていること等。日本から友人が来る度に彼らの労働時間の長さにはびっくりさせられることが多いですが、確かにこれは気になります。

休みの時に娘と職場の近くのメリーゴーランドに。マドリッドらしく、ドン・キホーテの像まで描かれていました。

休みの時に娘と職場の近くのメリーゴーランドに。マドリッドらしく、ドン・キホーテの像まで描かれていました。

私も日本で仕事をしていた頃は残業をしました。本当に楽しい時も沢山ありましたが、そのまま続けるのは難しいと思ったことを覚えています。家族がいないから沢山残業をできたというのもありますが、家族がいなくても残業をできるだけ抑えようとするヨーロッパにいる現在、それが普通であってはいけないということを痛感します。(とは言え、現在スペインでもかなりの仕事量なので、少しは残業をせざるを得ないのが現状ですが。)

その他、私も感じたことですが、日本の文化では「控え目な女性」「男性より前に出ない女性」を好む人が多いので、自分より学歴や職歴が「上」の女性を敬遠する男性が結構います。私はその辺りはかなり割り切ってしまいましたが、仕事のお客さん、初めて会う男性等の前で「いかにも隙がないキャリアウーマン」に徹するか、「警戒心を抱かせない」為にわざと「知らないフリ」をしたり相手を持ち上げるかで、状況に応じて気を配る必要があったことを思い出します。これも「控え目な人が美しい」という文化に加え、学歴があまりに社会で幅を利かせているという日本社会の構造から来ている歪みだと思います。

日本は私の生まれ育った国ですし、大切な家族や友人のいる国なので、帰国する度にホッとする部分もあります。日本のサービスの良さ、製品の品質の良さ、日本人の礼儀正しさには帰国の度に感心してしまいます。反面、日本滞在中の私自身の経験や、日本から来た友人を通じ、改めて日本という国の持つ良さと同時に、何とも言えない閉塞感を感じることが少なくありません。

実は寒さで震えていてメリーゴーランドどころではなかった娘。

実は寒さで震えていてメリーゴーランドどころではなかった娘。

スペインのような主義主張が日本では幼いと写るかも知れない反面、コミュニケーションが活発なスペイン人の中にいると、個を出すことに対するためらいが少なくなって行きます。そうすると、自分がのびのびできるせいか、相手に対しても寛容になるようです。同時に、厳しいことでもしっかり言う風通しの良い関係の為、ぶつかることはあっても簡単に崩れない人間関係が築けます。

娘、義母とその母。クリスマスは我が家に4世代が集いました。

娘、義母とその母。クリスマスは我が家に4世代が集いました。

もちろん、スペインには日本にないような問題も沢山ありますし、何度も苦しい体験をしてきたので、スペインの方が良いというつもりはありません。それでも、そういう日本独特の打ち破りがたい閉塞感で苦しんでいる人達を見るにつけ、こうして日本の外に出た経験を通じ、私達も何らかの形で社会に貢献できる日が来ればと思います。日本に住み続ける人には文化の継承、間断のないアイデンティティの維持という大事な役割があり、日本を離れる人には、その日本の良さを外に広める役割と同時に、ともすると閉鎖的になりがちな社会に風穴を開けるという役割があるのだと私は考えます。互いの役割を尊重しつつ、悩める日本の友人に対して今自分にできることは何かを時々自問します。

友人と一緒にプラド美術館の近くの「垂直庭園(jardín vertical)」にて。

友人と一緒にプラド美術館の近くの「垂直庭園(jardín vertical)」にて。

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5 Comments

  1. Harukiさん
    はじめまして、グーグルで検索をしてこのブログにたどり着きました。私は現在社会人2年目ですが、3年経ったところで数多くの理由からHarukiさんのようにヨーロッパへ行くことを決めております。ブログを拝見させていただくたびに、生半可な気持ちではダメということを改めて感じます。Harukiさんの行動力はとても魅力的です!目指すゴールがぶれないようにコツコツ貯金をし、時期が来るまで東京で頑張り続けます。そこで、ご参考までに伺いたいのですが、スペイン語ゼロでスペインへ行かれてお勉強をなさっていたとのことですが、当初は語学学校から始められたのでしょうか?また、ヨーロッパでの就職は修士号がある前提でと聞きますが、やはり現在もそうなのでしょうか?ご家族やお仕事のことで、お忙しいところ大変恐縮ですが、お返事をいただけましたら幸いです。

    • mihoさん、

      メッセージをありがとうございます。そして、お褒めの言葉、恐縮です。

      スペインに着いた直後は語学学校から始めました。
      確か、学生ビザを申請する段階で、語学学校に登録していなければならず、既に準備を日本から進めた覚えがあります。
      ですので、1月5日にこちらに到着し、7日には授業がスタート、それでも日本の会社には休暇を消化しつつまだ在籍・・・という、何とも中途半端な状況でしたよ。

      語学学校での授業はかなり追いついていくのが大変で、辞めた人もかなりいました。(バケーションで来る人や、大学の友達と一緒に遊びに来る若者が多いので、それはそれで仕方ないのですが。)
      それでも、3ヶ月位で日常会話は大体なんとかなり、半年で上級コースを終えることができたので、やって損はなかったと思っています。
      仕事では色々な表現を覚えますが、正しいスペイン語文法を学ぶ機会はないので、早いうちに正しいスペイン語をマスターしておくことの大事さを毎日実感しています。

      ヨーロッパでの就職ですが、修士号があるかどうかはそれこそ仕事次第だと思います。
      いずれにしても、スペインに関して言えば、修士号が「前提」ということは特にないという印象です。
      ただ、修士号があっても自分の強みをうまく売り込めないと仕事につながりませんので、滞在中に何を身につけ、何をしたいのかを明確にするのが大切だと思います。

      色々悩まれることもあるかと思いますが、やりたいことに向かって毎日進んでいけば納得できる物に辿り着けるはずです。
      私も偶然が重なって今ここに住んでいますが、やりたいことを選んできて良かったという気持ちはあります。
      同時に、「自分が選んだことだから、不満があっても自分で責任を持って解消するしかない」という気持ちでいろんな問題に向き合うことにもなりますので、時々弱気になったこともありますが(笑)

      mihoさんの今後のご活躍をお祈りしております。

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