Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

スペインのイースター休暇

サグンには古い建物がいたる所にあります。

サグンには古い建物が至る所にあります。

今年のイースター休暇は、久々にカスティーヤ・イ・レオン州のレオン県にあるサグン(Sahagún)に行ってきました。2006年のブログにも書きましたが、この村は義母の出身の村で、折に触れて行く機会がありました。
カスティーヤ・イ・レオン州。wikipediaより。

最初の訪問は2005年。当時はまだ日本に住んでいましたが、一度今の夫を訪ねて行った際、偶然夫の両親もスペインにいて、何だかよく分からないまま村に連れて行かれました(笑)ようやく日本での仕事を片付けてくたくたの状態で行ったこともあり、往復の車ではとにかく寝続けたこと、料理についてくる野菜の少なさにびっくりしたこと ・・・そんなことを思い出します。

次に行ったのは、2006年のイースター休暇。この時には、イースター中の宗教的な「御神輿」を担いで練り歩く”Procesión”を見た為、思いがけずものすごい宗教行事に遭遇したという印象を受けました。また、夜は若者と一緒にディスコやバルに行って夜中の3時位までは騒ぐという日々だったので、スペイン語に慣れていなかったこと、全く知らない人達と3日間ほど場所を変えて飲むばかりの日々だったこと等が重なり、ちょっと静けさがほしくなった覚えがあります。 スペインに来て3ヶ月も経っていなかったので、この「スペイン文化の洗礼」はなかなか重かったです。

その中のレオン県にサグンはあります。www.destinocastillayleon.es

カスティーヤ・イ・レオン州の中のレオン県にサグンはあります。www.destinocastillayleon.es

その後は2006年の冬、2007年の秋 、そして娘が生まれた後の2011年の冬だけですから、スペインに9年滞在したにしては、数えるほどしか行っていないことになります。

娘が幼稚園に行くようになり、一般的な休暇の時期には彼女も休むようになった為、こちらも何らかのイベントを企画する必要がでてきました。今回はそれでこの旅行を計画です。

スペインのイースター休暇は「聖週間(Semana Santa)」と呼ばれます。それもそのはず、この週の開始はイースターの一週間前の日曜日の「枝の主日」(スペイン語では“Domingo de Ramos”、英語では”Palm Sunday”)、終わりは キリストの復活の日であるイースターという濃厚な一週間だからです。この一週間は、キリスト教会では非常に重要な節目 と考えられています。それもそのはず、キリスト教という宗教の起源は、神が自分の子であるキリストを、人々 の罪を償う為にこの世に送り、そのキリストが人々の罪を償う為に十字架につけられ、さらに 三日後に復活したというこの一週間に集約されているからです。このイースター休暇について、簡単にご説明します。

<枝の主日>
枝の主日というのは、イエスがエルサレムに入城した時を記念するもので、人々が棕櫚の葉を持って迎えたことから由来しています。この日は棕櫚の葉を持つのが一般的ですが、もちろん地域によっては手に入らないこともある為、色々な枝が代用されています。ちなみに、マドリッドでは圧倒的にオリーブの枝を持っている人の数が多かったです。

<聖木曜日>
十字架につけられる前日、有名な「パン=キリストの体、ワイン=キリストが人々の 罪の赦しの為に流した血」とする最後の晩餐が執り行われた日です。また、ゲッセマニの園でのキリストの祈りや、弟子達の足をキリストが洗ったこと等もよく知られています。(スペインでも、以前は12人の信者が選ばれ、ミサの最中に司祭がその人達の足を 洗うということをしていたそうです。)

最後の晩餐と言えば、やはりダヴィンチのこの絵でしょう。

最後の晩餐と言えば、やはりダヴィンチのこの絵でしょう。

 

<聖金曜日>
この日の午後三時頃に、十字架に磔にされたキリストが亡くなったとされています。この日は通常聖体拝領は行われず、十字架に人々が歩み寄ってキリストの苦難を忍ぶということが行われます。

<イースター(復活祭)>
キリストの復活の日。キリスト教会にとっては一番重要な日の一つです。

この時期は教会も人でいっぱいになります。イースター前に告解(神父に罪を告白し、神の赦しを受けるもの)をして清い心でイースターを迎えようとする人も多く、神父の告解の場所に人がかなり並んでいるのもこの時期ならではかも知れません。キリスト教徒が減ったとは言え、まだまだカトリックの伝統が息づいていると気づかされます。ipcj033

◎御神輿について

さて、スペインでは聖週間の一連の出来事を象った「御神輿」を人々が担いで街を練り歩くという伝統があります。この「御神輿」も、それを担ぐ行為も”Procesión”と呼ばれますが、この御神輿がかなり重く、それを苦しみながら担ぐことで、皆がキリストの苦しみを忍ぶという週になっています。

これらの御神輿を担ぐ人達は、 一般的にCapiroteと呼ばれるとんがり帽子を被っています。この伝統について、「中世の魔女裁判の時に遡る」という節もあれば、「キリストの受難を偲ぶ行為は匿名で行わなければいけない」という考えからきたという節もあります。いずれにしても、スペインのかなり広範な地域 でこのとんがり帽子が見られます。(初めて目にした時には、KKKを彷彿とさせる衣装に驚いた覚えがあります…。)440467_gd

Procesiónを担ぐ人達の 衣装の色にも意味があります。紫は、むち打たれたキリストのあざの色とされ、聖木曜日に多くの場で身につけられます。また、赤い衣装はキリストの流した血の象徴であり、木曜と金曜両方に身につけられます。キリストの亡くなった日である金曜日には、黒い衣装が身に着けられることが多いです。

黒装束の日。他の有名な地域に比べると小さな御神輿ですが、担いでいる人達はかなり苦しそうでした。

黒装束の日。他の有名な地域に比べると小さな御神輿ですが、担いでいる人達はかなり苦しそうでした。

子供達も、すぐ側を通る御神輿をじっと見つめていました。

子供達も、すぐ側を通る御神輿をじっと見つめていました。

なお、キリストが十字架につけられる聖金曜日には、特に重くて立派な御神輿が担がれることが一般的ですが、その他に、裸足で歩く人、十字架を担ぐ人等もいます。スペイン南部のアンダルシアでは、この御神輿を肩ではなく首の付け根で担ぎ、さらなる苦しみを耐える地域もあります。伝統的には、自分で自分をむち打つ人等色々な種類の苦しみ方があったそうですが、血を流す等の極端に自虐的な行為は禁止されたそうです。

ちなみに、御神輿には色々な種類がありますが、特に有名なのは以下のようなものでしょうか。

– キリストのゲッセマネでの祈りの様子(天使が現れる)

ゲッセマネで祈るキリストの様子。

教会から出て来た御神輿。

– 悲しみの聖母マリア(これは、スペインの一部では神様のような扱いをされており、セビリヤ等で天気が悪くてこの御神輿を外に出せないと、何と多くの人が泣きます。)

セビリヤで最も有名な御神輿の一つ、Virgen de la Macarena (又は"La Macarena")の様子。 http://www.quetiempo.es/より。

セビリヤで最も有名な御神輿の一つ、Virgen de la Macarena (又は”La Macarena”)の様子。 http://www.quetiempo.es/より。

– 処刑場まで十字架を運ぶキリスト
– 十字架につけられたキリストと、キリストの死を確認する為にわき腹に槍を刺す男
– 亡くなったキリストを十字架から降ろす弟子たちと嘆き悲しむ聖母マリアとマグダラのマリア
– 棺に入ったキリスト(中には、十字架から降ろしてガラスの棺に横たえられるよう、関節が曲がるようにできたキリスト像もあります。)

 

それぞれの都市や村で何世紀も続く伝統のある御神輿がありますが、この行事の意味を知り、人々の熱意を感じるにつれ、スペインの聖週間の良さをしみじみと感じるようになりました。夜通しテレビやラジオで御神輿の様子を伝える番組があちこちで流れ、この時期の独特な雰囲気がなかなか好きになり、何となく落ち着く気さえするのは不思議ですね。

今回子供たちは初めてこれらの御神輿を間近で見ることができました。4歳の娘はキリスト教系の学校に行っているので、だいぶ内容も理解しているようですが、2歳の息子もベビーカーから立ってじっと見ていたのが印象的でした。

娘はパパの肩車で見物。

娘はパパの肩車で見物。

特等席のベビーカーから立ち見をする息子。

特等席のベビーカーから立ち見をする息子。

◎おまけ・村での生活
久々にマドリッドを離れて村での生活をした訳ですが、これがまた一味違って楽しかったです。

義母が行き着けのお肉屋さん(マドリッドでもなかなか出会えない位美味しいお肉やチョリソがたくさんあります!)に夫が行って注文をした所、袋に「ベゴーニャ(義母の名前)の息子」と書かれていました。また、友人とバルで待ち合わせをする時は、「○○の店」と言って会うという感じです。私のことを覚えてくれている人もいて、こういう人と人との親密な関係が居心地良かったです。

また、その村に住む友人の家に行った所、敷地の一部にある建物を披露宴等に貸しているとのこと。何と、その建物は10世紀にできたもの。。。こういう歴史のある建物がどこにでもあるのが、スペインの懐の深さだなぁ、と実感しました。

友人の家の敷地にある古い建物。昔は修道院の一部だったそうです。

友人の家の敷地にある古い建物。昔は修道院の一部だったそうです。

また、アストルガの友人の両親の古い家もそこにあった為、今回初めて訪問して家の中を見せてもらいました。友人の母親が小さかった頃の自転車(60年前のもの?!)や、昔村にあったお店のビン(80年前だとか)まであって、アンティークの宝庫でした。ちなみに、ビンはいくつかもらってきました。今度企画しているパーティーに使うつもりです。

普段は誰も住んでいない家ですが、中庭も子供達の遊び場になりました。

普段は誰も住んでいない家ですが、中庭も子供達の遊び場になりました。土の壁が何とも古い田舎の家という感じです。

聖週間とは言え、もちろん、そのような宗教行事に浸らずに休暇を海や海外で過ごす人たちもいます。それはそれで良いと思いますが、もし興味があれば、是非イースター直前の週のスペインを皆さんにも知ってもらえればと思います。ただ、日本のゴールデンウィークのようなものなので、ホテルの値段もある程度上がりますし、車では渋滞も。どうぞご注意を!

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4 Comments

  1. 毎回とっても楽しく拝見しております。
    読ませて頂くタイミングが主に混雑の通勤電車の中のせいか
    お子様達やスペインの写真に癒されます。

    イースターが来ると外国にも春が訪れたなーって
    日本にいながら勝手に思っています。

    今年の休暇は今まで登場した
    いくつかの街を訪れてみようかなーと、
    計画段階でも楽しんでいます!毎回くわしく背景や歴史に
    触れてくださるので旅行もさらに楽しくなる事、
    間違いないです!スペイン国内での移動は電車ですが、
    もしご旅行されて効率的だった街の順番があれば教えてください。

    これからも楽しみに読ませて頂きます!
    素敵な週末をお過ごしください♬

    • >Pippiさん、

      コメントをありがとうございます。
      いつも楽しんで読んで下さっているとのこと、こちらもとても嬉しいです。

      私はそこまでスペインの色々な地方を知っている訳ではありませんが、春から初夏にかけての電車での移動ということでしたら、アンダルシアがお薦めかも知れません。
      夏だと暑くてなかなか厳しくなるので、その前にコルドバやグラナダ、セビリヤ等はきっと楽しいと思いますよ。
      後は、やはり観光地として有名なバルセロナやサンティアゴ・デ・コンポステーラも外せませんね。
      時期や滞在期間にもよりますが、どうぞスペインでの滞在を楽しんで下さいね!

  2. Haruki さん、
    お返事、アドヴァイスありがとうございます。
    スペイン南部へは行ったことがないのですが、
    見所が沢山あり過ぎてうまく計画を立てないと、、。
    これまでのんびり1, 2ケ所滞在型の旅行が多いのですが
    アンダルシア地方の旅も何回かに分散させたほうがいいかなとも。
    こんな感じで計画段階でもあれこれ楽しんでおります。

    Harukiさんももう少ししたら夏休みの計画が始まるのでしょうか。
    またスペイン人の休暇事情なんかもご紹介くださーい。

    どうぞ素敵な春、初夏をお過ごしください♬

    • Pippiさん、

      私も、スペイン滞在の醍醐味はのんびり1、2箇所滞在型だと思います。
      いろいろ行きたくなる気持ちも分かりますが、やはり旅で体調を崩してはいけませんし、ゆっくりすることで見えてくる部分ってたくさんあると思いますので(^-^)

      アンダルシアの一地域にゆっくりも良いですし、ガリシア地方なんかもお薦めですよ。(温泉もあります!)
      どちらも魚介類が美味しいですが、ガリシア地方の緑の美しさは日本に似ているかも知れません。

      こちらは夏の計画は特にしていませんが、ここ数週間イベント続きだったので、またHPの更新をしますね。
      (子供を寝かしつけている最中に私も眠ってしまうことが多くて、なかなか更新が思うように進みませんが…。)