Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

年金制度

近所の噴水。天気の良い日に青空を見上げながら。

近所の噴水。天気の良い日に青空を見上げながら。

日本の年金制度については、個人情報流出その他の事故で、既にあまりよく思っていない方が多いと思います。さらに、日本の年金制度を信頼しない人達、払いたくても払えない人達がいることにより、年金未納問題も以前から取り上げられています。

社会保険庁の個人情報管理の不始末を解決すべく、2010年より日本年金機構が発足しました。この機構になってから、HPの情報の検索は簡単になりましたし、解決された問題もいくつかはあることと思います。とは言え、個人的には、当初の目標だった「電話は3コール以内に出る、いらっしゃった方をお待たせするのは30分」という条件が今は守られているのか、非常に気になります。(発足当初は全く守られていませんでした。)

日本の制度しか知らなかった頃の私は、年金制度とはそのようなものだとしか思っていませんでした。ですが、こうして海外に住んでみて、日本とスペインだけではなく、日本とヨーロッパ各国の制度の違いを知るにつれ、日本の年金制度に疑問を感じざるを得なくなってきました。今回は、基本的には日本とスペインの比較のみにしますが、日本の年金制度の限界を知っていただく一助になればと思います。

● 年金支払義務

市の中心を警官がパトロールする際、たまに馬に乗っているのを目にします。

市の中心を警官がパトロールする際、たまに馬に乗っているのを目にします。

日本では当たり前のように20歳になると年金支払の義務が発生します。私が学生だった頃はそのお金を支払う余裕はなく、両親が一定期間払ってくれました。両親には、自分たちの年金と子供達の年金だけで、かなりの出費をかけていたことになります。その後は学生特例という制度で、「申請の年度(申請月より)は払う必要はなくなる。その後払いたくなったら払うことも可。」ということになりました。

スペインでは、国民年金とは就労者のみが支払うものです。従って、学生時代に払う必要もなければ、学生特例の申請もありません。

ちなみに、この日本の学生特例、皆さんが海外の大学で勉強する際には適用されません。私がスペインに来た際は、その後何年スペインにいるか不確定だった為、海外居住届を出していませんでした。結果として、年金支払義務が発生し、海外の大学院での学費・生活費の他に日本での年金支払もあり、かなり痛い出費でした。通常、海外での勉強の方が出費は大きいのに、その部分がカバーされていないことに疑問を感じました。

● 年金受給資格

日本では、25年間年金を支払うと年金受給資格が発生します。

スペインではこれが15年間となります。短いと思う方がいるかも知れませんが、ヨーロッパではこれでも長い方です。一番長いチェコは15年(61歳で退職の場合は25年)、ルクセンブルグは10年、イタリアやドイツは5年、フランスは制限なしです。

● 海外居住届

日本では、海外に居住している人であっても、市役所で海外居住届を出さなければ年金支払の義務は発生します。海外居住届を出した後は支払は任意となる為、将来の年金に備えて支払いを続けたい人は、そのまま支払い続けることも可能です。

王宮近くの旧市街にある銅像。たくさんの石像や銅像がこの地域にはあります。

王宮近くの旧市街にある銅像。たくさんの石像や銅像がこの地域にはあります。

スペインでは年金支払はそもそも就労者のみに当てはまる為、このような複雑なことは発生しません。

この海外居住届に関し、最近驚くべきことを知りました。何と、日本の「海外居住届を出した後に任意支払い」を選択した場合、積み立てても年金は受給できないのです。年金受給資格を得てから役所に出向くと、そこで今まで自分が積み立てた額をそっくり返されて終わりだそうです。退職後に毎月お金をもらう代わりに、今まで自分が積み立てた額が返ってくるだけとなれば、お金の価値が随分低くなっているはずです。(数十年前に毎月5000円を積み立てていたとして、それを現在の5000円で返されても価値が同じではありません。)社会保険庁に支払う代わりに有効な投資をしていた方が、よっぽどましです。

これらは「海外在住者」という理由からだそうですが、このような話は役所にとって不都合になるせいか、海外居住届を出す際には何も説明されません。私は偶然こちらで発行される日本語の月刊紙で知りましたが、知らない人も多いのではないでしょうか。

私は日本人で日本が好きですが、このようなことがある度に、日本の制度はそもそも海外在住ということが想定されていない制度なのだと痛感します。また、私の場合は夫が日本人ではない為、色々な場所で制度上の差別も感じます。私はスペインでは外国人ですが、おそらく私がこちらで受ける制度上の不都合よりも、夫が日本に住む事で生じる制度上の不都合の方が多いと感じます。皆さんはどうでしょうか?

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2 Comments

  1. こんにちは
    年金の問題って自ら意識しないとなかなかちゃんと理解できないですよね。私もそろそろ気になる年ごろ?ですが、一体いつからいくら貰えるのか恥ずかしながら把握してません。
    日本は過去20年金利のつかない社会であったこともあり、考えようによっては「積み立てたお金がそっくりそのまま返って来る」ならまだましかもしれませんね。国内はデフレでモノの値段が下がらず、対外的には円高(といっても20年前頃にも80円台はありましたが。。)で購買力が上がり・・・ でも最近(というより少々前から)の心配はむしろ「積み立てたお金全部戻ってくるの?」という点ではないでしょうか? 手続きや制度の問題ではなく、構造的に資金不足になったら。。。と考えると怖いですね。自己防衛するほどテクもなし財もなし。。。
    一応住宅は円建てで借金して購入しましたので、なるべくゆっくり返し、余裕があったら米ドルに換えておいて「円安になれー」と密かに祈ってます。。。

    • 高1父さん

      コメントありがとうございます。本当に、年金の問題って難しいことがいっぱいありますよね。
      私も、学生時代に両親に払ってもらっていた頃は、「そんなものなんだろう」という程度にしか認識していませんでしたし。こういうことも、日本の状況を知っているだけでは、何が不都合なのかわからないものですよね。

      ご存知の通り、スペインも今は大変な資金不足で、政府の作った制度に依存しているだけでは甚だ不安な状況です。
      そういった中、同世代の友人の中には、買ったマンションを貸し、その賃料も使って別のマンションを買って住んでいる人の話等も聞きますし、日本の知り合いで香港に口座を持った人の話も聞きますので、「自己防衛」を考えている人もいるみたいです。

      当たり前のことかも知れませんが、一番大事なことは、自分がどのようにお金を使うかに興味を持ち、常に新しい生の情報に目を通すことですね。投資家やアドバイザーの話だけを目にしていると、やはり自分で考える癖がつかないな、と最近痛感しています。これがなかなか難しいんですが・・・。