Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

The Road Less Traveled

今回は特に気に入った本のご紹介です。”The Road Less Traveled”:M. Scott Peck著(邦訳は「愛と心理療法」という題で出ています。)1978年に出版されて以来、この本は心理学に携わる人のみならずその他の多くの人々の間でも名著と言われており、既に全世界で1000万部以上が出版されたベストセラーです。実は、カルロス・ゴーンも愛読書の一つにあげているとか☆私は英語版を読んだので、日本語の本とは翻訳の仕方が異なるかも知れませんが、以下簡単に内容を紹介します。870028742_23

全体の構成は、『1.実践、2.愛情、3.成長と宗教、4.神の愛』となっていて、人生の目的とは何か、愛とは何か・・・等の根源的な問題に答えを与える内容が具体例とともに書かれています。章立てだけを見るとすごくキリスト教っぽいですが、全くそういうことはなく、心理学の本として読み進めることができます。現代は「いかにお金を稼ぐか」「いかに成功するか」「より良いコミュニケーション」といったハウツー本が巷に溢れていますが、この本はもっと深い人間の本質に訴えかける本だと思いましたし、私にとっては物の見方を大きく変えた本の一つです。

ちょっとだけ内容をご紹介・・・。

  • 恋愛について

例えば、「人それぞれには自我があり、成長するにつれて自分と他人というものの区別がつき、自己の確立へと向かう。この自我を崩すことができるのが恋愛関係やその他依存関係である。だから人は恋愛に酔ってしまう。」とあります。ただ、ここで筆者が言うのが「恋愛は自我を崩すこと(相手に自分をそのまま受け入れてもらったり、普段の社会生活での規律を取り払った関係を持ったりすることができる)であるのに対し、本当の愛情とは相手の為に常に自分を成長させようとする努力や痛みを伴う」ということ。だから、恋愛というのは人が成熟するにつれてどこかで愛情に変わるものだし、そういう努力ができない人は”falling in loveからfalling out of loveになる”とありました。すごく納得!なので、お互い馴れ合いで成長が何もなかったり、相手に要求ばかりする関係は本当の愛情関係ではない訳です。

  • 宗教について

最初は心理学の本に「宗教」というのが胡散臭く感じていたんですが・・・その宗教という内容も非常に興味深かったです。要は、「人それぞれ自分の宗教を持っている。キリスト教、イスラム教、仏教・・・というだけでなく、無宗教というのもそういう考えの一種の宗教、科学信仰の強い人達もそういう宗教を持っていることになる。さらに、各社会や家族にはそれぞれの見方があり、実はかなり偏っている。それも宗教である。」というもの。そして、「宗教と現実が全く同じということはあり得ない。そこで宗教を少しずつ現実に即したものに変えて行ける人、自分の宗教が全能ではないことに気付ける人が、真の意味で成長できる人である。逆に、宗教を強固に守ろうとする人は、変化を余儀なくされるまでそれに目を向けることができず、矛盾の中で自己弁護をしながら生きることになる。」とありました。

自分自身を変化させること、新しいものを受け入れることはある程度の痛みを伴う作業ですが、それをしないと宗教と現実が乖離した、所謂「言い訳だらけの人」「自分自身の問題を解決せずに不満を外に向ける人」「本音と建前のある人」になってしまうということのようです。そういう人っているかも・・・

  • 神の愛

これってすごく翻訳が難しいんですが、英語では”Grace”でした。「奇跡、神の計らい、天の摂理、加護」とかいろいろ訳は考えられるんですが、要は「人それぞれは祝福された光り輝く存在である」ということが書いてあります。生きていくこと自体が簡単ではない中で、人が生きることの究極の目的は、「世代を超えての魂/精神性の成長」と著者は言っています。そして、その為には日々のたゆまぬ努力、他者に対する深い愛情、強固な意志が必要であるそうです。というわけで、この”Grace”が今までの総集編という役割を果たしています。

この本を読んでビックリしたのは、精神科医という立場の著者が色々な人間の心理的成長を論じながら、最後に「魂/精神性(spirituality)の成長」について述べていることです。昨今は日本でも「スピリチュアリズム」と言う「ブーム」が存在しますが、そのスピリチュアリズムが自然に心理学の本に書かれており、その発展の為に私達が生きていると定義してあるのはある種の衝撃でした。870028742_41

スピリチュアリズムを所謂固い学問とは対局にある(unscientific)と捉える人も多いみたいですが、その中にはある種の真実も存在すると私は思います。もちろん、何事も自分で考えて受け入れるかどうかは判断すべきですが、この本を読んで改めて、スピリチュアリズムであれ心理学であれ、そういったものが全て「自己の精神性の成長」に向かっているんだな、と実感できました。理解しながら読み進めるのにはある程度時間がかかる箇所もありますが、読むと自分の考え方が随分変わります。

私はスペインに来てから、あまりに違う文化に戸惑ったり怒ったりしたことが多々ありましたが、この本のお陰もあって、それも大分許容できるようになりました。そして、自分の許容度の小ささにも気付かされました・・・。さらに、日本の「〜でなければならない」の多くが、社会のルールのように見えて、実は個人が進んで自分を縛っていることが多いことにも気付かされました。というわけで、この本には非常に感謝しています☆興味のある方は是非どうぞ。

英語版日本語版

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8 Comments

  1. あれ、誰もコメントありませんね。
    はるきのススメとなると、またしても読んでしまいそう。
    興味は湧きました。
    ということで、早速ヤフオクで入札しちゃった。
    定価は高かったので、中古で。
    >章立てだけを見るとすごくキリスト教っぽいですが、全くそういうことはなく、心理学の本として読み進めることができます。
    が決めてかな。
    変な話、はるきのススメなら無条件で受け入れてしまいそう。
    僕もある意味、想定外の環境での生活をしていますので^^;

  2. ヨッシー
    そうなんです。ちょっと内容が内容でコメントもしづらかっただろうし、まぁ「想定内」です(笑)
    >ということで、早速ヤフオクで入札しちゃった。
    お買い上げ、ありがとうございます!
    日本語の方は読んだことがないけど、きっと面白く読めるはず☆
    >変な話、はるきのススメなら無条件で受け入れてしまいそう。
    そんな恐ろしいことを言ってはいけませんよ〜〜。
    ヨッシーには今度変な本でも薦めてみようかな(笑)
    >僕もある意味、想定外の環境での生活をしていますので^^;
    そうだねぇ。
    でも、それも振り返れば全て良い経験だと思うよ。これは本当に実感。
    あ、ちなみに私は今日から仕事が始まったよ。
    3時間の講義があってそれから一人で学習だったけど、帰ったらすぐにバタンキューでお昼寝をしてしまったよ

  3. >お買い上げ、ありがとうございます!
    まだ入札だから、どうかな。
    たぶん大丈夫だと思うけど。
    定価は2100円もしたよ。
    はるきのススメなら大丈夫でしょ
    一応amazonのレビューも見てるけどね。
    あと話は変わるけど、
    HPの日記、スペインが優勝したのが7月になってたよ。
    あれは6月ですね。
    それと写真に非常に見覚えが…。
    ま、いいんだけどさ。

  4. ヨッシー
    私の言葉だけに惑わされることなく、どうぞレビューも参考に。
    頼みまするぞ。
    >HPの日記、スペインが優勝したのが7月になってたよ。
    >あれは6月ですね。
    直さなくちゃ。
    私のマックからだとうまく改行とかができないので、夫が帰ってくるのを待つことにします。
    「夫」だって。日本語だとフォーマルすぎる響きじゃのう。
    >それと写真に非常に見覚えが…。
    そうそう、ヨッシーの写真と一緒だよ!
    やっぱりあの写真は良いね☆
    皆で一緒に写っているので良いのもあったんだけど、私のHPだと表情が分からないので没になりました。
    ヨッシー、私のHPも見てくれていたんだね。。。杜撰さが目立つものですが。。。

  5. ムフフ、HPたまに見てます。
    たまだから指摘もこれだけ遅くなったんだけどね。
    夫より旦那のほうがやわらかいかな。
    あと、名前で言う人もいるよ。
    はるきの場合、そういわれても分からないだろうけど。
    ここのコメント見るだけだと、
    なんだかお互い、どこの国の時間でパソコンやってるかわからないね

  6. ヨッシー
    私のHPにも貴重なビジターがいらっしゃるということで、これからはもう少しマメにアップします☆
    って言ってもmixiとかなり内容はかぶってるけどね
    >夫より旦那のほうがやわらかいかな。
    >あと、名前で言う人もいるよ。
    なるほどー。
    私のこだわりかも知れないけど、個人的には、社会的な場所以外では「主人」も「旦那」もあまり使いたくないなぁ、、、って思ってるの。
    日本では、家の主とかそういう家長っていう所から来ていると思うけど、結婚した途端に「妻はへりくだる」みたいな感じがしちゃって、何か違和感を感じるんだよあね。「旦那」だと少しそういう感じは薄いのかな?
    でも、最近は「敢えて家内という言葉は使わないようにしています」っていう男性も見るし、少しずつ変わってきているのかもね。
    というわけで、名前という方向も考えようかしら。
    でも外国名だと違和感あるかも。。。当分悩みそう(笑)
    >はるきの場合、そういわれても分からないだろうけど。
    うん、最近帰る度に浦島太郎の気分を味わってるよ。

  7. ”The Road Less Traveled”ってThe Road が名詞でLess Traveledが修飾語でThe Road にかかるんですか?もしそうだとすると、翻訳するとどんなタイトルになるんでしょうか?
    『ほとんど旅されたことが無い道』って『道なき旅路』だと意味が逆ですか?
    はるきさんの記事を拝見すると、最近わたしが悩んでいたことのヒントが書いてあるようなので「夏休みの宿題」として読みます!アマゾンで注文しました。人間関係がとってもシンドイです。。。。。。
    トランスパーソナル心理学の本とは、また違うんですよね?
    このごろ思うことは、「人間は成長しなきゃいけないんだろうか?」ということです。成長した方がいいんでしょうけど。。。。。。
    わたしも「主人」というコトバに、若い頃から抵抗を感じています。ヒトサマへは、「ご主人」ですが、自分では公私共に夫と言っています。夫は公では「妻」、私では「いくこ」と言っています。
    「旦那」「連れ合い」「彼」「同居人」「パートナー」いろいろありますね〜〜。

  8. プリンさん
    >”The Road Less Traveled”ってThe Road が名詞でLess Traveledが修飾語でThe Road にかかるんですか?
    そうですよ☆
    >『ほとんど旅されたことが無い道』って『道なき旅路』だと意味が逆ですか?
    私は「道なき旅路」でもいいと思います。
    「まだ踏み固められていない道」とかでもいいかも知れませんが。
    そうそう、私はこれを読んで、高村光太郎の「道程」を思い出しました。
    >トランスパーソナル心理学の本とは、また違うんですよね?
    完全に違うとは言えないかも知れませんねぇ。。。
    彼の本の中にマズローの引用があったと記憶していますが、マズローって確かトランスパーソナルでは?
    ちょっとスピリチュアルの話もあるので、その辺りはトランスパーソナル心理学と言えなくもないかも知れませんが、でももちろんそれだけではないですので、プリンさんにとって色々なヒントがあるかと思います
    >このごろ思うことは、「人間は成長しなきゃいけないんだろうか?」ということです。
    そうですねぇ。
    成長しなくちゃいけないということはないと思いますし、自分の気力が萎えている時に成長はしんどいので、「あくまでできる時に」と私はのんびり捉えています
    ただ、人間誰でも、何か気に入らないことがあると、ある一定の思考/反応パターンがあるのかな?と最近思うようになりました。
    ある人は問題から逃げ、ある人は怒りをぶつけておしまい、ある人はすごく落ち込んで人の注意を引く・・・みたいに。
    そして、そういう風に他人の影響ですぐに負の反応を起こすと疲れる上、どこかで自分が変わらないと同じようなことが何度も起きるように最近思えてきたんです。
    「これは、どこかで成長しろということ???」と思ったことがよくありました
    深く考え過ぎる必要はないですが、この本が少しでもプリンさんのお役に立てば嬉しいです