Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

リサイクル・手放すということ

母から受け継いだ着物の紅葉柄。

母から受け継いだ紅葉柄の着物。

マドリッドに来てから数年、我が家に残っている母の持ち物をどうにかしなければという気持ちが私の中にはありました。私は母が亡くなって2年位経ってからスペインに住むようになった為、その間にできる限り新しい持ち主探しをしたりしましたが、どこかに「私がいなくなったら母の遺品はどうなるんだろう…」という心配がありました。おそらく、「残された物を管理する人がいない=母の思い出が適当に扱われてしまう」という恐れのようなものがあったのだと思います。そんなこともあり、スペイン移住後の3〜4年は、自宅に戻る度に母の荷物の整理に多くの時間を割いていました。(当時は、mixiのコミュニティー等もよく利用していました。)

不思議なことに、スペインに持ってきた母の思い出の品も、手元に置いて10年以上経って少しずつ整理できるようになってきました。ゴミとして捨てることはさすがに抵抗があってできませんが、スペインでも「リサイクル」という名目で色々な所で引き取ってもらえるようになったので、時間と共に「手放す」ことができるようになったと言えば良いでしょうか。

例えば、母がたくさん持っていたシルクのスカーフで、私が絶対使いそうにない柄のものや、既にちょっとシミが出ているもの。(30年以上前のものがごろごろあったので、当たり前かもしれませんが。)こういったものは繊維品のリサイクルに出しました。30枚近くあったものを5枚程度に抑えることに。

今回思い切ってリサイクルに出したものに、何と母が小学生時代に着た着物があります。(60年位前のものですね。)紅葉の柄の着物で、確か母も誰かのお下がりとしてもらったものだと記憶しています。

着物を着た母と伯母。60年前の写真になります。

着物を着た母と伯母。60年前の写真になります。

その後の母、伯母、祖母と私。30年以上前の写真です。

その後の母、伯母、祖母と私。30年以上前の写真です。

私自身小学校時代のクラスの劇で一度着たことがありましたが、その後は誰も着ないまま時が過ぎ、箪笥の肥やしとなっていました。このままではもったいないという一心で、2006年に自分で思い切ってドレスに仕立て直し、友人の結婚式で着たことがありました。かなりの労力でしたが、母の着物を再利用できたということがとても嬉しかったです。

06年の友人の結婚式にて。デジタル写真はなく、これが唯一の写真として残っています。

06年の友人の結婚式にて。デジタル写真はなく、これが唯一の写真として残っています。

その後、何かパーティーがある度にこのドレスを試着してみたものの、なんだかしっくりいかない感じがあり、着ないまま10年が経ってしまいました。母から受け継いだ歴史ある着物を手放すことには多少の抵抗がありましたが、この着物のエネルギーは十分受けられたような気もした為、「お母さん、ありがとう。」と感謝の気持ちと共に思い切って先月手放しました。

母が作ってくれたサンタクロースの長靴と、同じハギレで作った動物達。クリスマスにこのブーツがお菓子でいっぱいになるのが、私たち兄弟の楽しみでした。

母が作ってくれたサンタクロースの長靴と、同じハギレで作った動物達。クリスマスにこのブーツがお菓子でいっぱいになるのが、私たち兄弟の楽しみでした。

もう一つは、母が私たち兄弟の為に作ってくれたサンタクロースの長靴のパッチワーク生地の残りです。小さなクリスマス柄の布がとても可愛らしかったのですが、このハギレも30年ほど眠っていたことになります。実家にあっても誰も使わないのでスペインに持ってきていましたが、こちらでも長い間出番はありませんでした。昨年末、ちょうど娘の学校(カトリック系)で「リサイクルの布を使い、イエス様の馬小屋の動物を作りましょう。」という企画があり、そこで思い立ってこのハギレを出しました。娘にとっては普通のハギレですが、母が30年前に買った布をまた娘の為に使えたということで、私の中には密かな感動がありました。

現在、第三子が生まれる前の準備として、長女のベビー服を再度取り出してクローゼットに並べています。

ベビー服の準備が少しずつ進んでいます。

ベビー服の準備が少しずつ進んでいます。

新しい命を迎えるということは、その為のスペースを新たに作り出す作業でもあり、時には不要な物を手放す作業も発生します。私たちの場合は、クローゼットの収納スペースを確保するという名目で、夫が長い間袖を通していないスーツやネクタイの処分をしました。生地は新品同様でも、デザインがどこか古くなってしまったり、体にあまりフィットしない物は、結局ビジネスの場では出番がなくなってしまいます。当初はネットで売ろうとも考えていましたが、そういう「時間がある時にしよう」という作業はほとんど進まないことが多く、そうこうしているうちに5年以上経過したと思います…。新しいネクタイを数本買い、古いネクタイに感謝をしつつ手放し、本当に似合うスーツだけをクローゼットに残したところ・・・何だかクローゼットにも春がやってきたような感じがしました。

第三子が生まれるまであとちょっと。本当にハプニング続きの妊娠後期でしたが、夫や友人の協力を得て、自分のペースを持って落ち着いた気持ちで娘の誕生を迎えられること、長年大切にしていたものに感謝をして手放せる機会を得たことを嬉しく思います。

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