Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

ベルムッ

ベルモット。隣のビールはスペインで一般的な「マウ(マホウ、では通じませんのでご注意!)」

ベルモット。隣のビールはスペインで一般的な「マウ(マホウ、では通じませんのでご注意!)」

「ベルムッ」と言う名前のお酒と言ってもピンと来ないと思いますが・・・。日本では「ベルモット」あるいは「ベルムト」と呼ばれたりもするお酒で、日本人にも馴染みのある「マルティーニ」「カンパリ」「チンザノ」等はこのベルモットの一種です。そう言うと、お酒の味も大体想像できるでしょうか。

このお酒、スペイン語では”vermú”、或いは”vermut”と書き、フランス語の”vermout”から来ているそうです。主に食前酒として飲まれるもので、主な原料は白ワインとニガヨモギですが、その他苦みや香りを加える為に多くのハーブやスパイスが加えられます。八角、クローブ、シナモン、レモン、パンジー、百合の根、ラズベリー・・・その数40種にも上るとか。一般的には赤のベルモットがイタリア産、白のドライベルモットがフランス産だそうです。

この食前酒はヨーロッパでは古くから一般的に飲まれるもので、起源を辿るとヒポクラテスまで遡ることができるとか。紀元前460年に生まれたこの哲学者/医師が開発したもので、中世には「ヒポクラテスのワイン」と呼ばれたという説もあります。この飲み物が各地で改良を加えられ、門外不出のレシピが地中海地域でできあがりました。その後、19世紀にイタリアで量産化されるようになり、その深い味わい、そして「地中海の雰囲気を映し出した飲み物」というイメージも相まって、一躍大人気になりました。その一つが、今でも人気の赤のベルモット、Martini Rosso(赤のマルティーニ)です。ちなみに、今年はちょうどこのマルティーニが販売されてから150年になるそうです。

マルティーニが販売されてから約30年後の1900年初め、このマルティーニが初めてスペインに登場します。最初の輸入先はバルセロナ。一気に上流階級の間で大流行になったそうです。1960年代までこの人気が続き、「マルティーニのテラス」と言えば上流階級の社交の場だったということですから、かなり長い間ブームだったことになります。

スペインでよく飲まれるお酒の瓶の数々。Casa Albertoという、ドン・キホーテの作者セルバンテスが住んでいたことでも知られる建物のバルで。

スペインでよく飲まれるお酒の瓶の数々。Casa Albertoという、ドン・キホーテの作者セルバンテスが住んでいたことでも知られる建物のバルで。

話がマルティーニばかりになってしまいましたが・・・。マルティーニが大人気になってベルモットを飲む機会が増えたと言われますが、ベルモットはそもそも昔からスペインにあり、バルで食前酒として頼めば一緒にタパスも出されたことから、50年位前までは「ちょっと一杯いかが?」と言う時には「ベルモットを飲みに行かない?(¿Quedamos para tomar el vermú?)」と言うのが一般的だったそうです。(今ではほとんど使われません。)また、スペインのバルでは水道の蛇口のような所から直接ベルモットを出してくれる所が沢山あるので、なかなか雰囲気があって好きです。

昨日、夫と一緒に久々に二人で出かけましたが、以前二人でよく行っていたバルでやはりベルモットを注文。久しぶりに飲むとまた美味しいものですね。

ベルモットをまた注文。この鮮やかな緑のオリーブを見ると、マドリッドだなという気になります。

ベルモットをまた注文。この鮮やかな緑のオリーブを見ると、マドリッドだなという気になります。

その後何軒かのバルを梯子し、色々話をしながら夜の街を散歩。ベルモットの香りと歴史のあるバル、凍えるような夜の寒さとクリスマスのイルミネーション。改めて、スペインに愛着が湧いてきたんだなぁ、と実感しました。

こんな内装のバルもあります。どちらかと言うと、パブに近いですが。

こんな内装のバルもあります。どちらかと言うと、パブに近いですが。

ソルのクリスマスツリー。2008年に書いたツリーを再利用したものと思われます。

ソルのクリスマスツリー。2008年に書いたツリーを再利用したものと思われます。

帰り道にある石像の説明に目を留めつつ、夫と仕事や家族のことを話し、ゆっくり帰宅です。

上院の会館裏手にある石像。スペインではかなり有名なカノバス・デル・カスティーヨという政治家のものです。

上院の会館裏手にある石像。スペインではかなり有名なカノバス・デル・カスティーヨという政治家のものです。

8年目のスペイン生活も、あと少しで終わりです。

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