Haruki's way

〜スペイン・この不可思議な国〜

お姉さんへの道

「鳩さーん!」と言って公園で鳩を追いかける娘。

「鳩さーん!」と言って公園で鳩を追いかける娘。

スペインのヴァリャドリッド(Valladolid)出身の作家ミゲル・デリーベス(Miguel Delibes)の作品で、「王座を奪われた王子様(El príncipe destronado)」という本があります。残念ながら日本語にはまだ翻訳されていませんが、この本の主人公は、弟が生まれて末っ子ではなくなった3歳位の男の子、彼の視点で大人の世界やちょっとした日常の不条理が描かれています。この表現はまさに良い得て妙という感じで、友人との会話でも、「お宅の王子様/お姫様の反応はどう?」と聞くことがたまにあります。(それとも、既にあったこの表現をデリーベスが作品のタイトルとして用いたのでしょうか?)

我が家の娘かおりも、遂に王座を追われることになりました。「王座」と言うと大袈裟ですが、やはり夫の家族の中では初孫で義母の欲しかった女の子だっただけに、弟ができるのは大きな変化。娘がこの変化を受け入れられるように、少しずつ私達も準備を始めました。

赤ちゃんのお着替えやおむつ替えが流行となりました。

赤ちゃんのお着替えやおむつ替えが流行となりました。

まずは妊娠期間。少しずつ、「これからお姉さんになるんだよ。」と言うようにしました。最初は興味を示さなかった娘ですが、1歳半位になると赤ちゃんに興味を示すようになり、ベビーカーに乗っている赤ちゃんを見る度に「ベベー!(Bebé)」と叫ぶようになりました。さらに、子供の泣き声を聞くと「ママー、赤ちゃーん!」と言うように。それが自分よりかなり大きい4、5歳の子供でもお構いなしなので、ちょっとおかしかったです。

8月には娘が義両親とお手伝いさんとマルベヤに滞在したので、義母が赤ちゃんの人形を買ってくれました。娘は今でもその人形を大切にしていて、私が健斗にするのと同じ動作をしています。

11月頃からでしょうか。私のお腹が大きくなり、娘と思うように遊べなくなってきました。立ったり座ったりという動作が思うようにできなかったり、陣痛が来て「あたたた・・・」と顔をしかめたりすると、「ママー、お腹痛いー。チュー!」と言ってお腹にキスをしてくれるように。時にはスパルタで「ママ、起きてー。立ってー。」「ママー、おでい(「おいで」のつもり)。」と無理矢理立たせてボール遊びを強要する娘ですが、お腹にキスをしてもらっただけで嬉しくなり、優しい子に育っているなぁ、と感無量になる日々でした。

私が緊急入院をしたのでクリスマスプレゼントは皆で病院で開けましたが、義両親が、かおりが興味を持っていたベビーカーと買い物カートを買ってくれたので、さらにかおりの赤ちゃん好きが加速しました。8月にもらった赤ちゃんの人形をベビーカーに乗せ、家の中を行ったり来たりしては、「赤ちゃんとお散歩。」と言うようになり、友人からいただいたドラえもんのミニタオルを赤ちゃんにかけ、「おねんねー。」と言って寝かしつけるのが日課になりました。そして、弟の名前も覚え、私達が「弟の名前は?」と聞くと「ケットン(健斗のつもり)・・・二コアー(ニコラスのつもり)」と答えるように。とは言え、まだ家族が増えるという実感はなかったように思います。

出産直後の様子は以前の日記に書きましたが、周りがかおりの様子にも気を遣ってくれたお陰で、あっという間に彼女は健斗を自分の弟として受け入れてくれました。公園で「健斗はどう?」と聞かれると、「Kento, guapo!(可愛い、カッコイイの意味)」と答えるようになりました。(誰が教えたんでしょう?)そして、毎朝私が起きて健斗をリビングに連れて行くと、嬉しそうな顔をし、猫なで声で「けーんとー!チュー!」と言って近寄ってきます。まだ健斗が小さいので、「頭とお手々にチューするだけよ。」と言い聞かせていますが、ちょっと見ていない隙にほっぺたやまぶたにキスをし、「かおーり、健斗にチュー・・・お目々ー!」と言ったりするので、ちょっとギョッとしてしまうこともあります。小さい赤ちゃんが可愛くて仕方ないという感じでしょうか。特に嫉妬はないようです。

健斗にキスをするかおり。かなり勢いがあって、見ているこっちがヒヤヒヤします。

健斗にキスをするかおり。かなり勢いがあって、見ているこっちがヒヤヒヤします。

弟が生まれる前から赤ちゃんに興味を持ってくれた娘。健斗が泣いていると、「けんとー、お腹痛ーい!マッサージ!」か、「けんとー、お腹空いたー、ミルクー、ママー!」と言って私の所に来てくれます。しかし、そんな娘でも、宮崎駿の映画が始まると別人に変わり、健斗が大泣きをしていてもどこ吹く風で、自分の世界にしっかり浸ってしまいます。この辺りがやっぱり2歳児ですね。

かおりが弟に対して嫉妬しなかったのにはいくつかの理由が考えられます。まず、①前々から少しずつ心の準備をさせたこと、②家族がかおりにいつも注意を払っていてくれたこと、③友人が健斗の誕生祝の他にかおりに何かを準備してくれたことの3点です。

①については既に書きましたが、赤ちゃんに興味を持たせるようにしたのが良かったようです。

②については、健斗が生まれた時の為に義母が「健斗からかおりお姉ちゃんへのプレゼント」を準備してくれたり、義両親がいつもかおりと一緒にお散歩をしたりボール遊びをしてくれたりしたお陰で、私が健斗につきっきりであまりかおりに時間を割けない部分もカバーしてもらいました。

姉弟で公園に。かおりはおばあちゃんに「もっと強く!(¡Más fuerte!)」と言い続けています。

姉弟で公園に。かおりはおばあちゃんに「もっと強く!(¡Más fuerte!)」と言い続けています。

義母、大活躍です。

義母、大活躍です。

義弟も実はよく遊んでくれました。

義弟も実はよく遊んでくれました。

また、義両親は娘が興味を持つものにいつも注意を払ってくれたので、子供用の傘を買ってくれて娘が大喜びということもありましたし、かおりのお絵描きや友達とのお食事用にと、「お姉さんの」テーブルとイスもIKEAで買って組み立ててもくれました。次の日の朝に起きて「わー!」と感動した娘が微笑ましかったです。

おじいちゃまがくれた傘。

おじいちゃまがくれた傘。

わぁ、傘だー!!

わぁ、傘だー!!

子供用のテーブルとイスで大満足。

子供用のテーブルとイスで大満足。

また、弟にベビーカーを明け渡して何もなくなった娘の為にと、長時間のお散歩にも使えるような折りたたみ式の軽いベビーカーを買ってくれました。これまた大ヒットで、娘が家の中で何度もベビーカーを使ってのお散歩をねだっていました。プレゼントもさることながら、こういう娘が本当に欲しいと思う物を把握しているということが親として嬉しかったです。

その他、夫が健斗の入浴をかおりに手伝ってもらうようにし、「かおりが手伝ってくれるから助かるなぁ。」と、姉弟の絆を強くするようにしたり、「健斗はまだ赤ちゃんだけど、かおりはお姉さんだから、パパはかおりと色んなことができて嬉しいよ。」と言ったりしてくれたお陰で、娘はさらにご満悦。

こうして台所での共同作業が日々行われています。健斗はお風呂に慣れ、もう泣かなくなりました。

こうして台所での共同作業が日々行われています。健斗はお風呂に慣れ、もう泣かなくなりました。

かおりはパパと公園に行くのが大好きです。

かおりはパパと公園に行くのが大好きです。

また、私も健斗が寝ている間にちょっと娘と近くまでお出かけやお買い物をするようにしました。ちょっと可愛い洋服を着せ、近く(歩いて2分!)のスーパーまで買い物に行ったり、お花屋さんの花を見たり、時計屋さんの時計を見たり、ケーキ屋さんでクッキーを二つ買ったり・・・と、本当にちょっとしたことですが、二人の時間を取るように努めました。娘はすっかり気に入ってくれたようで、「ママー、おかむみのー(「お買い物」のつもり)!」と言うようになりました。

「お買い物」の途中でベンチで休む娘。後ろはいつも訪ねるお花屋さん。

「お買い物」の途中でベンチで休む娘。後ろはいつも訪ねるお花屋さん。

③については、本当に健斗のお祝いに来る人来る人がかおりにも何らかのプレゼントをくれたので、かおりが嫉妬することは全くと言っていいほどありませんでした。スペイン人からのプレゼントとしては、ハローキティーの食器セット、お箸(何とZARA HOMEのもの)、絵本、ぬいぐるみ・・・。数えたらキリがありません。また、かおりがハローキティーが好きと知った日本の友人からは、ハローキティーのお財布、バッグ、ふりかけや海苔までいただきました。本当に皆に感謝です。

嬉しそうにプレゼントを開ける様子。

嬉しそうにプレゼントを開ける様子。

現在娘はおまるトレーニング中。きちんとできるようになったら「お姉さんだから、大きいベッドを買ってあげる」という約束をしていますが、道はまだまだ険しく、時には「かおり、まだ赤ちゃん!」と言っておむつを欲しがる娘ですが、日々成長しているのが分かり親としては嬉しい限りです。(反面、赤ちゃんだった頃の娘が懐かしくなることもありますが。)このまま元気で成長し、姉弟で仲良く遊ぶ日が来るのが待ち遠しいです。

Tagged as: ,

Leave a Response